第10章 【親友とは】
校庭に出て、ポケットの中に詰まった小石を捨てていると、涙が頬を伝った。今だけは、ハリー達には会いたくなかった。
馬鹿みたいだ、わざわざ朝早く起きて小石を拾い、20枚も羊皮紙に名前を書いてゴブレットに投げ入れ続けるなんて。
校庭の隅で人知れず泣いていると、誰かが後ろから近づく音がしてクリスはハッとして涙を拭った。こんなところ誰かに見られたらそれこそ生き恥だ。
「や、やあ」
「こんにちは」
振り返った先に居たのは、どこかで見た事のある青年だった。ハッフルパフのネクタイをしている。たしか――そう、よく女生徒が噂していた人物、セドリック・ディゴリーだ。
「こんな所でどうしたの?ハリー達は一緒じゃないのかい?」
「たまには……1人になりたい時だってある」
「そう……だね。その気持ちは分かるよ。人に囲まれて生きるのって、たまに辛い時もあるよね」
セドリックの整った顔立ちが、一瞬陰りを見せた。ああ、この人も何かの重圧に耐えている人なんだと、クリスは直感した。
「彼方は……どうしてここに?」
「今日は折角のハロウィーンだろう?それなのに皆、代表者の話しばかり。折角のお祭り気分が台無しでつまらなかったからね」
「どうして?彼方だって『三大魔法学校対抗試合』の代表者としてエントリーするって聞いたけど……」
「ははっ、君まで知ってるとは。――そうなんだ、エントリーしたは良いんだけど、正直、自分が皆の期待を裏切るんじゃないかって不安で仕方ないんだ。それでここへ逃げてきたってわけ」
そうか、監督生になるほど優秀な人でも怖いものなんてあるんだ。クリスの知っている監督生と言えば、ロンの兄弟のパーシーで、規律を重んじ、期待されればされるほどふんぞり返って歩いていた気がする。
「ふふ、出場者失格だな」
「そう言う君こそ、あんなにエントリーするって粋がっていたのにこんな所で泣いたりして」
「みっ、見ていたのか!?」
「大丈夫だよ、誰にも言ったりしないから。だから僕がここに逃げて来たことも内緒にしておいて」
「……分かった。まったく、公明正大なハッフルパフの監督生がきいてあきれる」
「僕から言わせれば、勇猛果敢なグリフィンドール生がメソメソ泣いているなんて驚きだよ」
「言ったな、この!」