第10章 【親友とは】
「どうしてもって言うなら、僕が入れてやろうか?」
「いいッ!羊皮紙はまだまだ用意してあるんだ、絶対に1つくらいは入るはずだ!」
ドラコが見ている前だ、いつまでも醜態を晒しているわけにはいかない。今度こそ、とクリスは全ての集中力を研ぎ澄まし、狙いを定めた。すると投げた羊皮紙がゴブレットに入った。
「やった!!」
だが喜びもつかの間、青白い炎が一瞬揺れたかと思うと、投げ入れた羊皮紙がプッと吐き出されて足元に転がった。
「アハハハハ、それ見ろ!どうせ君の事だ、婚約解消の為1千ガリオン欲しさにエントリーしようとしたんだろう?さっさと諦めて僕との婚約を認めれば良いのに」
「煩い、煩い!!こうなったらとことんやってやるぞ!!」
クリスが一生懸命羊皮紙を投げ入れていると、朝食を終えたハリー達がロビーにやって来た。しまった、ドラコ達の次に見られたくない相手だ。しかし、ここで止めるわけにはいかない。
それからもクリスは羊皮紙を投げ入れては吐き出され、投げ入れては吐き出されを繰り返し、気が付けば全校生徒達の目に晒されることになっていた。
クリスは顔を通り越して耳まで真っ赤にしながら羊皮紙を投げ入れ続けた。誰か止めてくれる人がいたら止めて欲しかった。意地っ張りな性格が邪魔をして、もう自分では止めたくても止められない。
そんな時だった、クリスの肩をポンと叩いてくれたのは。
「アンジェリーナ……」
「クリス、邪魔して悪いけど、ちょっといい?」
同じグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが、ゆっくりと年齢線を踏み越えた。そして『炎のゴブレット』の中に堂々と羊皮紙を入れた。
その瞬間、盛大な拍手が巻き起こった。これでグリフィンドール生から代表者が出るかもしれない。自分がなれなかったのは悔しいが、同じグリフィンドール内から代表者が出たら万々歳だ。
クリスは吐き出された羊皮紙を拾い集めると、こっそり皆の輪の中から外に出た。