第9章 【炎のゴブレット】
「自らを代表選手にと立候補するものは、羊皮紙に所属校と自分の名前を書いてこのゴブレットの中に入れよ。これから24時間の間、ゴブレットは玄関ホールの真ん中に置いておく。そして明日のハロウィーンの夜、ゴブレットは各校の代表選手を選出するであろう……最も、17歳に満たない者は立候補出来ないよう儂が『年齢線』を引かせてもらったがのう」
どんな複雑な仕掛けをされるかと思ったが、ただゴブレットの中に羊皮紙を入れるだけ――それなら自分だけでもどうにかなると、クリスは人知れずニヤリと笑った。
「これは危険な課題で命を落とす生徒が出ない様にとの計らいだ。一旦代表選手に選ばれたら最後、魔法契約によって死ぬまで課題をこなす事となる。なので中途半端な覚悟で立候補しないように注意してほしい。儂からは以上じゃ!それでは皆、おやすみ」
「年齢線か……」
大広間を出て、玄関ロビーでフレッドがニヤリと口を歪ませていた。なにやら良い方法を思いついたらしい。クリスもクリスで、頭の中で年齢線を突破する方法を既に考えていた。
方法は実に簡単だ。外で小石でも拾ってそれを羊皮紙で包み、年齢線を越えない安全な場所から投げ入れればいいだけだ。これなら『老け薬』も要らないし、上級生に化ける必要も無い。明日の朝早速校庭に出て小石を沢山拾っておこう。
ほくそ笑むクリスに向かって、ジョージが声をかけてきた。
「おいクリス、君もエントリーするつもりだろう?」
「もちろん!このチャンスを逃さずにいられるか!!」
「それでこそ僕らのクリスだ!どうするんだ?君も『老け薬』を飲むのかい?」
「いや、私はもっと安全策でいく」
「そっか。他の3人はどうするんだ?」
「私は止めておくわ。17歳以下だし、まだ勉強不足よ。それに死人が出る様な競技に参加するほど度胸は無いわ」
「ハリー、君はどうするんだ?」
「えっ?僕?僕は――」
ハリーは迷っているように見えた。しかし、ハリーにこれ以上何が必要なのだろうか。ハリーはもう全てを持っているのに。金も、名誉も、それにクディッチの才能もあるし、大切な仲間だっている。これ以上何を望むのだろうか。