第9章 【炎のゴブレット】
見た目も対照的なら、拍手の量も対照的だった。クラウチ氏の方はパラパラと少ない拍手が送られた程度だったが、バグマン氏の方はより多くの拍手が送られた。
見た目もあるだろうが、きっとハリーが言っていた通り元ビーダーとして活躍していたからだろう。だがそんな事、クリスにとってはどうでも良い事だった。
「このお2人は『三大魔法学校対抗試合』をするにあたって数カ月もご尽力なさってくれた。それに伴い、お2人はカルカロフ校長、並びにマダム・マクシーム、そしてこの儂と共に『三大魔法学校対抗試合』の審査員をして下さることになった」
途端にクリスの眼が輝いた。クリスだけではない、この大広間にいる全員の眼が一斉に4人に注がれた。みんな緊張と興奮を押さえるので必死だ。目を輝かせる生徒達を前に、ダンブルドアは満足げに頷いた。
「それでは、フィルチさん。『箱』をここへ」
それまで目立たず部屋の隅にひっそりといたフィルチが、宝石のちりばめられた大きな木箱をダンブルドアの前に持ってきた。
100年以上も使われず、封印されていた『箱』を見ようと多くの生徒が身を乗り出した。
「代表選手達が1年をかけて取り組むべき課題は、もう決まっておる。その課題をいかに成し遂げるかで審査員が点数を下す!それに必要なのは卓越した魔力、敢然たる勇気、冷静な判断力、そして個性と人間性じゃ!」
ダンブルドアの言葉を、一言も聞き漏らさない様に皆黙って耳を傾けていた。クリスは心臓が高鳴るのを感じていた。
――出たい、どんな事をしてでも代表選手になりたい!!
「皆も知っての通り、試合を競うのは3人の代表選手じゃ。各校から1名ずつ代表選手が選ばれ、3つの課題をこなし、最終的に最も多くの得点を取った者が勝者となる。代表者を選ぶのは史上最も公正なる選者――『炎のゴブレット』じゃ!!」
ダンブルドアが杖を取り出し、木箱のふたを3回叩くと、初めに上のふたが開き、それから側面の板がゆっくりと倒れ、中から荒削りの木のゴブレットが現れた。
ゴブレットの縁からは不思議な青白い炎がゆらゆらと揺らめき、その炎は不思議と見る者を魅了した。