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ハリー・ポッターと闇の姫君

第9章 【炎のゴブレット】


「ダームストラングの生徒達、どこ行っちゃったのかな?」

 1人クラムを探していたロンが、ふらふらとこちらにやって来た。本気でクラムを自分達の部屋に泊める気らしい。
 その時だった、クリス達のすぐ後ろで、カルカロフが自分の学校の生徒達を急き立てていた。

「ほら!早く船に戻らんか!!」

 カルカロフは、まるで羊を追い立てる犬の様に歯をむき出しにして怒鳴った。しかしクラムへの態度は180度変わって、まるで目に入れても痛くない愛する我が子を守る様に、分厚いモコモコのコートを肩に掛けてやって手をひいていた。

「食事は十分にとれたか?ビクトール。欲しいものがあれば何でも取りに行かせるぞ?」

 しかしクラムは無言で首を振るだけだった。他の生徒がワインが欲しいというと、叱り付け、猫なで声でクラムだけを贔屓しているのは誰の目にも明らかだった。
 そんな一団とすれ違う時、一応客人だからとクリス達は道を譲った。カルカロフは咄嗟に「ありがとう」と言い、ふとハリーに目をやった時、まるで幽霊でも見たかのような驚いた顔をした。カルカロフの眼が、ハリーの額の傷に釘付けになっている。

「どうした?まさか今さらポッターがホグワーツにいる事に気づいたのか?」

 今度は後ろから、獲物を捕らえる鷹のような目でカルカロフを睨みつける人物が現れた。ムーディ先生だ。
 独特のコツ、コツという足音をさせゆっくりとハリー達に近づいてきた。ムーディ先生が近づくと、カルカロフはじりじりと後退した。

「ま、まさかお前は……」
「つもる話はまたあとにしようではないか、カルカロフ。道を塞いでいるぞ」

 まるでヘビに睨まれたカエルの様に、カルカロフは脂汗をかき、自分の生徒達を集めると逃げる様にロビーを出て行った。その後姿を、ムーディ先生が嫌悪感を隠しもせずに睨みつけていた。
 その視線の鋭さたるや、背筋が凍るほど冷たく、また言葉に出来ない程の憎悪が込められているのを、クリスは確かに見たのだった。
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