第9章 【炎のゴブレット】
しかしハーマイオニーの言い分はこうだった。
「ちょっと容姿が良いからって、彼方みたいにマヌケ面で涎を垂らしている人なんていません!!」
「でも、ホグワーツにはあんな綺麗な女の子いないぜ?」
「そんな事ないよ!チョウは――」
「チョウ?」
突然ムキになって怒鳴ったハリーに、クリスは疑り深い目をした。クリスの知る限り、ハリーの口から知らない女の名前が出たのは初めてだ。
ハリーは失言だったと手で口を押さえたが、泳いだ目がチラッとレイブンクローのテーブルに向くと、頬を通り越して耳まで真っ赤に染めた。それを見て、クリスはちょっとイラッとした。
「お2人さん、女を顔だけで判断すると痛い目見るぞ」
「なんでだよ」
「私が良い例だ」
クリスが偉そうにふんぞり返てそう言うと、ハリーとロンは顔を見合わせて大人しくなった。
そしてディナーが消え、今度は色とりどりのデザートが出てくると、ロンはそれら幾つかを自分の近くに置き、レイブンクローのテーブルから見えやすい位置に移動させた。
だが、シルバーブロンドの美少女はもう現れなかった。その代り、空いていた教職員テーブルに2人の男性が現れた。
1人はこれぞお役人と言うほどキッチリとした格好で、一部の隙も無い位真面目な顔つきをしている。もう1人は体格がよく、ピッチリしたローブを着て愛想のいい笑顔をふりまき席に着いている。こんな対照的な組合せも珍しい。
「あっ、あれクラウチさんとバグマンさんじゃない?」
「知っているのかハリー?」
「うん、クディッチ・ワールドカップの時に出会ったんだ。クラウチさんは魔法省の人でパーシーの上司なんだ。バグマンさんも魔法省の人で、元プロのクディッチのビーダーだった人」
「はッ、どっちも私には縁のない人だな」
クリスは自嘲的に鼻で笑った。だが、何故この2人が今日ここに現れたのだろう。そう疑問に思っていると、デザートがきれいさっぱり消えた後、ダンブルドアの方から説明があった。
「皆、よく食べ、よく飲み、よく騒いだじゃろう。ここで皆に新しい客人を2人紹介したい。まずは魔法国際協力部部長、バーテミウス・クラウチ氏。そしてその隣が魔法ゲーム・スポーツ部部長、ルード・バグマン氏じゃ」