第9章 【炎のゴブレット】
毎夜毎夜談話室にいる生徒達に「あなた達は知っていますか?ベッドのシーツを替え、暖炉の火を消し、教室を掃除して、料理を作ってくれる屋敷しもべが無給で働かされているのを!?」と言って、バッジの入った缶をもって脅しかけてくるのだ。
お蔭でネビルをはじめとする数人の気の弱い生徒数名が2シックルを出してバッジを買ったが、誰も付けようとしなかった。
だが、それが逆にハーマイオニーを燃え上がらせる原因になっていた。
「クリス!貴女に実家の屋敷しもべ妖精に手紙を出すように言ったのに、まだ出していないじゃない!?」
「いや、ほら、最近宿題が多くて手が回らなくて……」
「嘘おっしゃい!この間貴女が図書館でまた下らない本を読んでいたのを見たのよ!」
「下らなくなんてないぞ、あれは人生の糧になる――」
「すみまセン」
そこまで言いかけた時、シルバーブロンドの髪に大きなブルーの瞳をした美人が2人の間に割って入って来た。制服から見てボーバトンの生徒だ。しかも肩にかけたショールには見覚えがある。ダンブルドアの演説の時に笑っていた生徒だ。
「その料理、食べないのなら私にくだサイ。もう食べ終わったんでショウ?」
2人が言い合いしているのを、食べ終わったと判断したのか、クリスとハーマイオニーの前に置いてある皿を指さした。2人は突然割って入られてぽかんとし、ロンはその少女の美しさに声も出なかった。
ハリーだけが「どうぞ」と言って皿を少女の方へ向けた。少女は「ありがとうございマス」と言ってまたレイブンクローのテーブルに戻って行った。
一瞬、4人の間に静寂がはしった。初めに沈黙を破ったのは、ロンだった。
「あ、あああの人絶対ヴィーラだ!!」
「ヴィーラって、男を惑わすあの妖魔の?」
「そんなはずありません!!」
今度はハーマイオニーの怒りの矛先はロンに向いたらしい。だが確かにあのきらめく様なシルバーブロンドに、透き通るような肌、愛らしい唇と長いまつげに、澄んだブルーの瞳は目を惹くものがある。
実際、彼女がレイブンクローの席に戻る間、何人もの男子生徒が振り返って穴が開くほど彼女に見入っていた。