第9章 【炎のゴブレット】
「紳士淑女の皆、そして今宵ははるばる遠方から来てくださった客人達よ。このホグワーツに訪れた事を心より歓迎する。本校での滞在が快適かつ素晴らしい経験になる事を儂は確信しておる」
その時、この暖かい大広間の中で、まだショールを頭からかぶっている女の子がクスクスと笑った。それを見てまたハーマイオニーが何か嫌味を漏らしたが、なんと言ったのかは聞こえなかった。
どうもハーマイオニーはボーバトンの女生徒が気に喰わないらしい。確かにハーマイオニーの性格からして、絵に描いた様な所謂『女子』は受け付けないだろう。
それはクリスにも言える事だが、ハーマイオニーがクリスの分まで怒ってくれるからか、そんなに怒りは湧いてこなかった。
「『三大魔法学校対抗試合』は、この宴の後に正式に開始される。では――大いに食べ、飲み、騒ぎたまえ!!」
ダンブルドアの恒例の演説が終わると、金の皿にご馳走が溢れんばかりに現れた。ホグワーツの生徒は見慣れているので、すぐにがっつき始めたが、見るとボーバトンやダームストラングの生徒達は恐る恐る手を出している。
きっとこんな風にご馳走が出てくるのを見たのは初めてなのだろう。それでも、料理をひとくち口にすると、感激しておかわりまでしていた。
「外国から来た客人にまでこんなに喜んでもらえるなら、屋敷しもべも苦労した甲斐があったな」
「そこよ!クリスッ!!」
しまった、とクリスは思った。ハーマイオニーの前で、屋敷しもべの話題はタブーだった。ハーマイオニーは憤然として語り出した。
「『ホグワーツの歴史』にはもちろん、『改訂ホグワーツの歴史』や『偏見に満ちた、選択的ホグワーツの歴史――闇の歴史――』にも屋敷しもべ妖精が無給で働かされているのを書いていないのよ!おかしいと思わない!?全部合わせて5640ページもあるのに、私達が百人以上の奴隷を虐げてきたなんて一言も記されていないのよ!?」
例の夜以外、クリスはもちろんハリーもロンも『S・P・E・W』の活動には積極的どころか無関心と言っても良い位だった。だがハーマイオニーの熱意は止まるところを知らなかった。