第7章 【S・P・E・W】
「ちゃんと考えてあるの。貴女の仕事は実家に住む屋敷しもべ妖精に働きかけ、正当な報酬と休暇などを得る権利を主張させるように働きかけるのよ。つまりこの計画の第一人者ってところね。あ、ちなみにロンは会計係、ハリーは書記係よ」
呆気にとられ、クリスはぽかんと口を開けてハーマイオニーを見た。もう駄目だ、こうなってしまったハーマイオニーを止められるものはどこにもいない。
クリスが黙ったのを見て、ハーマイオニーはさらに続けた。
「まず初めはメンバー集めからよ。入会費2シックル。それでバッジを買い、その収入でビラを撒いて宣伝するの。ロン、私の部屋に空き箱があるから明日それを持ってくるわ。ハリーは今私が言った事を全部書き留めておいて」
ハーマイオニーはS・P・E・Wのバッジの入った箱をもって、ルンルンとまるでスキップする様に女子寮への階段を上って行ってしまった。
取り残されたハリー、ロン、クリスの3人は「はあ~っ」とそろって重い息を吐いた。
あまりのハーマイオニーの奇行に、クリスは頭が痛くなってきた。まさかとは思うまいが、これを卒業するまで永遠続けさせられると思うと、眩暈までしてくる。
毎日毎日食事を掻っ込んで図書館に通って、いったい何をしているのかと思いきや、まさかこんな自分勝手な計画を画策していたなんて……それにドビーならいざ知らず、チャンドラーにいったい何をどうやって言えばいいのか。下手な事を言うとお説教の嵐が降って来るのは確実だ。クリスは目瞑ってこめかみを押さえた。
その時、不意にコン、コンと窓ガラスを叩く音が聞こえた。クリス達は咄嗟に音のした方に目を向けると、なんとそこには月夜に照らされたヘドウィグの姿があった。
ハリーは急いで窓を開け、ヘドウィグを談話室の中に入れた。ヘドウィグはすいーっと飛んでハリーの肩に止まると、くしゃくしゃの羊皮紙を結び付けてある足をハリーに突き出した。
「良くやった、ヘドウィグ!」
ハリーが褒めると、ヘドウィグは「ホー」っと自慢そうに鳴いた。3人は待ちきれず、はやる気持ちを抑えながら手紙を取り、それを輪になって読んだ。