第6章 【許されざる呪文】
「1つ言っておく、わしの授業では教科書など使わん。だからとっととカバンにしまえ」
全員が教科書をカバンにしまうのを確認すると、ムーディ先生は名簿を手に生徒の名前を呼び始めた。黒い普通の目は名簿を見ているが、青い魔法の目は呼ばれる生徒をしっかり見据えていた。最後の1人が返事をすると、ムーディ先生は改まって前を向いた。
「お前たちが3年生の時、何を習ったかルーピン先生から手紙を貰っている。全面的に多くの闇の怪物を習ったそうだな。しかし!お前たちは遅れている、それは呪いの扱い方についてだ!闇の魔術と呪いは切っても切れない関係だ。そこでわしは1年かけてお前たちに最低限の呪いのなんたるかを教える!」
皆緊張した面持ちでムーディ先生を見ていた。教科書も無しで、いったい何をやらされるんだろう。そう言えばルーピン先生の時も、最初は杖だけ持って職員室にいたボガートをやっつける授業をした。今回も実践的な授業ばかりになるのだろうか。
「呪いと言っても、この世には数限りない呪いが存在する。さて、今回学ぶのは魔法省でわしが教えようと思っている呪いが、まだお前たちに教えるのは不適切だと考えられている。しかし呪いと戦う上で、その呪い自体を知るのに早い方が越したことはない。これはダンブルドアも同じ考えだ。呪いをかける相手が
親切丁寧に今からどんな魔法をかけるか教えてくれるか?そんな事は無い!だからこそ備えなく手はならん。いついかなる時でも、緊張し、警戒せねばならん。分かったかミス・ブラウン?わしが話しをしている最中はそんな占い道具などしまっておけ」
ラベンダーは真っ赤になって飛び上がった。ムーディ先生の魔法の目が、ラベンダーの手元を見つめている。どうやら魔法の目は自分の真後ろどころか、物質すら見通す力があるらしい。
「では早速だが、魔法省で禁じられている呪いを知っている者はいるか?」
それを聞いて、クリスは心臓が鷲掴みされた様な気がした。1年前、ルーピン先生の授業でボガートを自分そっくりのトム・リドルに変身させ、相手を死にいらたしめる呪文を使おうとしていたなんてムーディ先生が知ったら、どう思うだろう。それでなくともクラウス・グレインの娘として目をつけられているのに。