第5章 【弾むケナガイタチ】
ハーマイオニーは大きく息を吸い込んだが、叫ぶ事なく、唇をキュッと噛みしめると、鼻息を荒くして黙ってしまった。
そのまま授業が終わるまで、ハーマイオニーは一言も口をきいてくれなかった。それどころか選択授業で分かれる時でさえ、挨拶の1つも交わしてくれなかった。
『マグル学』が終わり、昼食の時間になるとクリスは大広間に向かった。もうハリー、ロン、ハーマイオニーの3人は席に着いていた。少し間を空けてもらい、ハーマイオニーの隣に座ると、ハーマイオニーはものすごい勢いで昼食を掻き込んでいた。
「あー、ハーマイオニー?それ、屋敷しもべの新しい権利擁護?」
あのロンが驚く程、ハーマイオニーの食欲は旺盛だった。何かに没頭する時のハーマイオニーは、だれにも止められない事は、この丸3年間で良く学んだ。そして、結局最後はそれに付き合わされることも。
「まさか僕らにも死ぬほど食えって言うんじゃないだろうね?」
「おあいにく様。図書館に行きたいだけよ」
「マジかよ!!?」
「まさかハーマイオニーまで齢を誤魔化す方法を探しに行くのか?」
詳しい事は何も言わず、ハーマイオニーはナプキンで口を拭くと「じゃ、夕飯の時にね」と言って嵐のように去っていった。残されたハリー、ロン、クリスの3人は額を寄せ合って話し込んだ。
「どう思う?あれ」
「少なくとも宿題の為じゃないよな。まだ1日目だもん」
「と、なるとやっぱり屋敷しもべに関する事かな?」
「そもそも、どうしてハーマイオニーは急に屋敷しもべの擁護なんて始めたんだ?」
「う~んとね……クディッチ・ワールドカップの時にウィンキーって言う可哀相な屋敷しもべに会ったんだよ。命令通りに何でもやらされていて、『死喰い人』達がやってくる中、逃げたいのに逃げる事すらままならないくらい命令にがんじがらめで……主人のクラウチさんはウィンキーが『闇の印』を打ち上げたと分かったら、冷たくあしらって直ぐ解雇しちゃうし」
「なるほど、それで同情しちゃったわけか」
何ともお優しい、ハーマイオニーらしい見解だ。だがたった1匹の屋敷しもべを見て、全てを知った風になるのは良くない。屋敷しもべには、屋敷しもべの考え方もキチンとあるのだ。