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ハリー・ポッターと闇の姫君

第5章 【弾むケナガイタチ】


「1限目から『薬草学』と言う事は、早めに仕度しないといけないな」

 紅茶を一気に飲み干したのを合図に、4人は立ち上がって一旦寮に教科書を取に行った。それからまだ残暑が残る芝生を通って第3温室に辿り着くと、中でスプラウト先生が教卓に見るもおぞましい植物の苗をのせていた。
 真っ黒でヌメヌメした太い幹に、プツプツとした出来物がはれ上がり、先生はそれを生徒達の前で1つ潰すと、出来物からドロッとした膿を瓶に入れてみせた。

「ボブチューバ―、腫れ草です。こうやって出来物から膿を取り出し、瓶の中に入れて下さい。皆さん、ドラゴンの皮手袋をして下さい。原液が皮膚に触れると危険ですから。分かりましたか?」

 こんな作業、誰が好き好んでやりたがるのだろうか。クリスは嫌々出来物を潰して膿を出し、ドロッとした液体を瓶に入れた。これだから『薬草学』は嫌いなのだ。『薬草学』を学んでいて良い思いをした事なんて1度も無い。

「こんなもの人間のやる仕事じゃない。チャンドラーにでもさせるべきだ」
「チャンドラーって?」
「ん?ハーマイオニーにはまだ言ってなかったか?家の屋敷しもべだ」
「貴女のお家、屋敷しもべがいるの!!??」

 いきなりハーマイオニーが大声を上げたので、危うくボブチューバ―の膿がローブに引っかかるところだった。スプラウト先生が「私語は厳禁です!」と注意した。クリスは声をひそめた。

「……いてもおかしくないだろう?これでも一応先々代前まで爵位を賜っていた旧家のお嬢さまだぞ」
「それじゃあ、貴女の家では……その、もちろんお給料とか出しているわよね?お休みとかも――」

 ハーマイオニーがあまりにも真剣なまなざしでトンチンカンな事を問い詰めて来るので、クリスは思わず噴き出してしまった。

「ハーマイオニー。昨日も言ったけど、屋敷しもべが働くのは性分なんだ。人に尽くすのが奴らの生きる理由。どの家に、何代にわたって忠実に仕えて来たかで生きる価値が決まる」
「それじゃあ、貴女のお家でも奴隷労働をしているわけ?」
「奴隷労働とは人聞きが悪いな、こっちは働く場所を提供してやってるんだ。むしろ感謝してもらいたいくらいだ」
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