第4章 【三大魔法学校対抗試合】
ダンブルドアが大事な事を言おうとした、その時だった。大広間の扉が突然開き、本物の空を映す天井に大きな稲光が落ちてきたのと同時に、ずぶ濡れの旅行用の黒いローブを纏い、杖を突いた初老の男が大広間に入って来た。
ブルブルッと体を震わせ、水しぶきを飛ばすと、男は目深にかぶっていたフードを取った。何千という蝋燭に照らされたその男の風貌を見て、皆ダンブルドアが言いかけていた言葉を忘れ、言葉を失った。
何があったのか、雷鳴と共に現れた男は、顔じゅう傷がついていないところは無いと言うほど傷だらけで、所々えぐられていた。髪は殆ど白髪で、少しだけ黒髪が混じっている。
おまけに今さっきまで暴風雨に晒されていたと言っても過言では無いほどぼさぼさだ。
男は教職員用テーブルに向かって歩いていき、その度大理石で出来た床がコツッ、コツッと固い音を立てた。よく見てみると片足が義足だった。
血の気を失った唇は斜めに切り裂かれたように曲がっており、鼻も傷だらけで鋭いナイフで切り裂かれたようになっている。
だが一番恐ろしいのは、その眼だ。片方の目は黒くて小さい普通の目だったが、もう1つの目は青くてギョロギョロ縦横無尽に動いている。その眼が真後ろを向いた時、正面から見たら白目をむいているように見えた。
男は教職員用テーブルまで行くと、ダンブルドアと握手をし、なにやらヒソヒソと話していたが、生憎こちらまでは聞こえなかった。それから男は空いている席に着くと、懐から携帯用酒瓶を取り出し、グビッと中身を飲み込んだ。
「新しい先生を紹介せねばのう『アラスター・ムーディ』先生じゃ」
ダンブルドアの紹介に、パラパラと各テーブルから2、3人だけが義務的に拍手をしたが、皆その形相に恐れをなしたのか、ムーディ先生から警戒の目を逸らす事が出来なかった。そんな中、ロンが呟いた。
「ちょっと待てよ、ムーディって……」
「知ってるのか?ロン」
「うん、今日うちのパパが助けに行ったんだよ。家に侵入者が入ったから、魔法をかけたごみバケツが応戦したって。でも刑を軽くしたいからどうにかできないかって――この為だったんだ!」