第4章 【三大魔法学校対抗試合】
『ほとんど首なしニック』がそこまで言ったとたん、ハーマイオニーが突然手にしていたフォークとナイフを取り落した。顔は今まで見た事ないくらい見開いて、震えている。あまりのショックに打ちひしがれて、口がきけなくなったみたいだ。ハーマイオニーは『ほとんど首なしニック』を真剣に見つめた。
「屋敷しもべが、ここにもいるの?」
「ええ、いますとも。イギリス中でもこんなに屋敷しもべが暮らしているところは無いでしょう。恐らく……100名ほどいますよ」
「それが何か?」と、『ほとんど首なしニック』は事もなげに答えた。ハーマイオニーは益々ショックを受けた様な顔をして、ニックに問い詰めた。
「でも……あれよね?お給料はきちんと貰っているのよね?他にもお休みとか、それに有給とか、年金とかも――」
その言葉を耳にした途端『ほとんど首なしニック』と同時に、クリスも一緒になって笑い出した。
いったいハーマイオニーは何を言っているんだろう。屋敷しもべが仕事を休んだり、給料をもらうなんて聞いたことが無い。と、言うより彼ら自身が望まないだろう。ハーマイオニーは屋敷しもべの習性を理解していないんだ。
『ほとんど首なしニック』とクリスがひとしきり笑うと、ニックが代弁してハーマイオニーに丁寧に説明した。
「ミス・グレンジャー。貴女は知らないのかもしれませんが、屋敷しもべは人間に仕えるのが習性なのです。ですから有給や年金なんて望んでいないんですよ」
ハーマイオニーはむっつり黙って、食べかけのステーキの皿をグイッと遠くに追いやった。いったいハーマイオニーはどうしたんだろう?クリスはサーロインステーキを食べていた手を止め、ハーマイオニーに問いかけた。
「いったいどうしたんだ、ハーマイオニー?屋敷しもべが自分の仕事を全うしているのがそんなに気に入らないのか?」
「仕事!?違うわ、これは奴隷労働よ!!」
「奴隷労働!?」