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ハリー・ポッターと闇の姫君

第34章 【運命の歯車】


 ハグリッドはお茶を入れながら夏の予定について話してくれた。

「今年の夏は、悪いが手紙を送れねえかもしれねぇ。オリンペ――いや、マダム・マクシームと一緒にダンブルドアに頼まれた仕事がある」
「仕事って、ヴォルデモートと関係があるの?」

 臆せずハリーが訊ねると、ハリー以外の4人がピクッとお茶を飲む手を止めた。その質問に対し、ハグリッドはしどろもどろ「えー」だの「うー」だの言ってハッキリとした答えを言わなかったが、クリス達にはそれでヴォルデモート関連の仕事だとハッキリした。

 ハグリッドに別れを告げると、寮に戻って荷物をまとめた。午後からホグワーツ特急に乗って家に帰るのだが――今年から、クリスにはもう帰る家はない。
 一時的にダンブルドアの言う通りウィーズリー家のお世話になるらしいが、それ以降の事は分からない。もしかしたら、もう二度とあの家には帰れないんじゃないだろうか。

 昔はあんなに嫌がっていた家なのに、今は恋しくて仕方がない。あの鬱蒼と茂った森も、あの古びた屋敷も、あのお気に入りの書庫も、あの手入れの行き届いた庭も、あの小煩い屋敷しもべも、あの陰りを帯びた父も、もう見る事は出来ない。そう思うと涙が出て来そうなったが、なんとか唇を噛みしめて堪えた。

 大理石の石段を出て、馬車を待っていると校庭からフラー・デラクールがこちらに向かって手を振りながらやって来た。フラーはハリーに握手をすると、にっこりほほ笑んだ。

「貴方と会えてホントに、よかったデス」
「僕も会えてよかった」
「私、もっと英語を勉強しマス。そしていつかこちらで働きたいデス」
「も、もう十分上手だよ」

 ロンが真っ赤になりながらそう言うと、ハーマイオニーは面白くなさそうな顔でフンと鼻を鳴らした。最後にフラーがハリーの頬に軽くキスをすると、シルバーブロンドの髪をなびかせ、ボーバトンの生徒達が乗って来た巨大な馬車に戻って行った。

 それからフラーがいなくなったと思ったら、今度はクラムが湖の方からやって来た。どうやらハーマイオニーと2人きりで話しがしたいらしい。

「ちょっと、良い?」
「え?え、ええ……良いわよ……」
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