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ハリー・ポッターと闇の姫君

第34章 【運命の歯車】


 出来る事なら自分も泣きたい。しかし、セドリックを殺した張本人、ヴォルデモートの血が自分の体にも流れているのだと思うと、涙を流す資格はない。そう思った。

「セドリック・ディゴリーはハッフルパフの監督生として、実に勤勉で真面目で模範生そのものだった。そんなセドリックに死をもたらしたのが、他の誰でもない、ヴォルデモート卿じゃ」

 ダンブルドアの言葉に、一瞬大広間がシーンとなった。クリスは胸がズキズキと痛くて堪らなかったが、黙って話しを最後まで聞いた。

「諸君らの保護者の中には、この事実を皆に話す事を良しとしない者もおるだろう。こんな話を年端もゆかぬ子供たちに話すのは間違いだと。だが儂は事実は何ものにも勝ると思っておる。噂や嘘で固められた現実には希望を見出す余地はない。ヴォルデモートが復活した今、正に、団結してこれにあたる力が必要なのじゃ。今この場に居るダームストラング及びボーバトンの生徒達よ。我々はこれから手を取り合い、脅威に立ち向かう時じゃ。それが此度の『三大魔法学校対抗試合』の本当の意味での価値ある交流にならん事を願う」

 ダンブルドアが杯をかざすと、皆そろって同じように杯を掲げた。

「セドリック・ディゴリーに。そしてこれからの未来に」

 すすり泣く声が混ざり合いながら、生徒達は皆ダンブルドアに続いた。ダンブルドアが着席すると、いつもの様にお皿に大盛のご馳走が現れたが、クリスは全く喉を通らなかった。

* * *

 翌朝、クリスはハリー達に誘われてハグリッドの小屋を訪ねた。本当は気がすすまなかったが、断る口実も無かったので仕方なくついて行った。
 ハグリッドの小屋の戸を叩くと、中からファングの声が聞こえてきて、扉が開くとハグリッドより先にファングが飛びついてきた。

「待て、ファング!」

 ハグリッドがファングを退かすと、小屋の中に入れてくれて、早速ロックケーキを勧めた。岩の様に固いロックケーキは歯が欠ける事間違いないので、みんな苦笑いをしながら遠ざけた。
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