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ハリー・ポッターと闇の姫君

第34章 【運命の歯車】


 クリスがこれまでの事を思い出そうとした、その時、医務室の扉が勢いよく開かれた。マダム・ポンフリーが怒って出て行く間もなく、扉を開けた張本人はドカドカと医務室に入り込みクリスのベッドまでやって来た。

「……クリスッ!」
「ド、ドラコ……」

 いつもキッチリ撫でつけられているプラチナブロンドの髪を乱し、額に汗をかきながら必死の形相でクリスを見つめている。
 すかさずハリーとロンが立ち上がり、壁の様にドラコを通すまいとした。しかしドラコもドラコで、無理矢理ハリーとロンの間に割り込み、なんとかクリスに近づこうとしてきた。

「待ってくれ!僕はただクリスと話がしたいだけだ!」
「うるさい!お前の出る幕じゃないんだよ!」
「クリス!!本当なのかい?君の……君の父上が……死んだって!?」

 その言葉を耳にした瞬間、これまで抑え付けえていた涙が――セドリックの死体を前にしても、父の最期の瞬間を目にした後も流れなかった涙が、クリスの目からボロボロと一気にあふれて流れた。それを見て、誰もが言葉を失った。
 ドラコの声を――いや、ドラコだったからこその、その一言を聞いたその瞬間、長年父親だと思い続けていたクラウスの死がクリスの体中を真実として駆け巡った。

「……み、みんな帰って、くれ……」

 クリスは何かから身を守る様に、素早く布団を頭からかぶると、くぐもった声で4人に告げた。

「今は……皆の顔、見たく……ない……」

 涙ながらに訴えると、ややあった後、ぞろぞろと医務室を後にする足音が聞こえてた。扉が閉まったのを確認してから、クリスは大声で泣き叫んだ。

「うああああああああぁぁぁっっ!!!
         あああああああぁぁぁっっっ!!!」

 父が死んだ。いや、長年父と呼んでいた人が死んだ。その事実は、クリスを悲しみのどん底に突き落とすのに十分だった。
 医務室を通り越し、廊下まで響き渡るその声は、傷ついた獣の雄叫びにも似ていた。ハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてドラコは、それそれの思いを胸にこの叫び声を聞いていた――。
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