第33章 【決別】
「冗談じゃない!!魔法界が巨人をどういう目で見ているか知っているだろう?それにディメンターを解放しろと!?奴らがいるからアズカバンは脱獄不可能と言われているのに!!」
「だがそれは両刃の剣に過ぎない!ヴォルデモートがディメンターや巨人と再び手を組んだら、もう取り返しの付かない事になりかねんというのが分からんのか!!」
ダンブルドアはもういつもの穏やかで柔和な顔つきではなく、身体から熱を発して怒りを露わにしていた。
ファッジは微かに首を横に振りながら、「あり得ない、あってはならない……」と小さく呟いた。医務室は未だかつてないほどの静寂に包まれ、痛々しい無言の圧力がそれぞれの肩にのしかかっていた。
「それ程までに真実から目を逸らそうと言うのなら――」
静寂を破って、談部ドアの力強い声が響いた。決して怒鳴っているわけではないのに、その言葉は先程よりも強く胸に突き刺さった。
「袂を分かつ時が来た様じゃ。お主はお主の選んだ道を行け、わしはわしの選んだ道を行く」
「……これだけは言っておくがダンブルドア。私は……いつでも彼方のしたい様にさせてきた。だが彼方が私と敵対すると言うのなら――」
「わしの敵はいつでもだた1人、ヴォルデモートだけじゃ。お主がヴォルデモートの陣営に加わらない限り、わしらは同胞じゃよ」
全くの相反する意思を持たぬ限り、ダンブルドアは誰に対しても救いの手を差し伸べる。ハグリッドの時も、ルーピン先生の時も、シリウスの時も。そして今回もまた……。
しかしファッジはその手を取ろうとはせず、ダンブルドアから視線を背けた。するとそれを黙ってみていたスネイプがついに行動に出た。ズイッと前に進み出て、左手首の痣をファッジに見せつけた。
「見るが良い、これが闇の印だ。小一時間程前にはもっと黒く焼けこげ、ハッキリと紋章を残していた。
スネイプがその印を誰かに見せるのは、極めてまれな事だった。クリスは自分の左手首をぎゅっと掴んだ。
「『死喰い人』は全員この印を腕に刻みつけられる。お互いを見分ける手段であり、我々を召集する手段でもあった。大臣、貴方は過去『死喰い人』がこの印を着けているのを何度も裁判所で見た事があるはずだ。それでも目をつぶろうと言うのなら――」