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ハリー・ポッターと闇の姫君

第33章 【決別】


 ファッジは一瞬怯んだが、大人として、魔法省大臣として、直ぐに体勢を立て直した。

「マルフォイ氏の潔白は証明済はみだ!由緒ある家柄で、立派な寄付を色々として――」
「マクネア!」
「これも潔白済み!今は魔法省で働いている!!」
「エイブリー、ノット、クラッブ、ゴイル!!」
「いい加減にしたまえ!!君は13年前の裁判記録を見て名前を挙げているに過ぎ――」
「――グレイン。クラウス・グレイン」

 ハッと、皆がクリスの方を見た。皆の視線が集まったその顔は、恐ろしいほど無表情だった。
 何も感じさせず、何も感じられない。それが何よりも恐ろしかった。端整な顔のクリスは、人間離れした美しさを持ち合わせていると同時に、魂の無い蝋人形の様にさえ見える。

 クリスの赤い眼がファッジをじっと見つめた。そしておもむろに口の端をクッと持ち上げた。

「どうしたんです?大臣。何がそんなに恐ろしいのですか?彼方が大臣になるきっかけを作った男ですよ。もうお忘れになったのですか?――まあ、と言っても、もう死んでしまいましたがね。ククク、ハハハ……ハーッハッハッハ!!」

 クリスの乾いた笑い声が医務室に響いた。痛々しい、実に痛々しい笑い声だった。ダンブルドアが慈愛を持ってクリスの肩に手を置くと、真剣そのものの眼差しでファッジを睨んだ。

「ヴォルデモートが帰ってきた。これは否定できぬ事実じゃ、コーネリウス」
「しかし、ダンブルドア……」

 ファッジはそっぽを向き、組んだ親指をくるくる回して、明らかに落ち着きを失くしていた。

「いつまで拭抜けた顔をしておる!世界は再び魔の手に落ち様としておるのじゃ!コーネリウス、今すぐ真実に目を向け、大臣としての役割を果たす時じゃ!」
「だだだ大臣としての役目?」
「そう、まずは最初にアズカバンの看守であるディメンターを全員辞めさせることじゃ。その次に、巨人と手を取り最悪の事態に備える。そうすればヴォルデモートの力が盛大だった時より手はある筈じゃ」
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