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ハリー・ポッターと闇の姫君

第33章 【決別】


 それからどのくらいの間、闇の中を漂っていただろう。クリスはもう何も考えたくなかった。このまま闇の中を漂い、何も感じず、誰にも会わず、ただ静かに死んでいくのを待っていたかった。
 しかし現実は非情だった。バタバタと足音が聞こえてくると思ったら、突然バーンッ!と扉が開き、怒鳴り合う声が聞こえてきた。その騒音で、クリスの意識は闇の世界から現実世界に戻ってきてしまった。

「どう責任を取って下さるんです、大臣!!これでは証言することも出来ないではありませんか!」
「証言もなにも、奴は狂っていた!自分がしたことはまるで『例のあの人』に命令された事だと思い込んでいたにすぎない!完全に奴の妄想だ!!」
「だからってディメンターを校内に入れるだなんて!!」

 どうやらここは医務室らしい。視界の端に、ハーマイオニーとスネイプ先生の姿が見えた。クリスはボーっとする頭を横に向けた。すると自分と同じ様にベッドに横たわったまま、ロンと、ロンの1番上のお兄さん、それとウィーズリー夫人に囲まれ、ひっそりとこちらを見ているハリーと目が合った。
 不思議な事に、2人とも何も言う気にならなかった。と、言うより会話を必要としなかった。目と目だけで、ハリーが何を言いたいのか分かった。2人は誰にも気づかれず、ひっそりと黙って事の成り行きを見ていた。

「あのディメンターのお蔭で、クラウチは……クラウチは……!」

 マクゴナガル先生は怒りに拳を握り、全身を震わせていた。全て聞かなくとも、クラウチJrに何があったのかハリーとクリスには分かっていた。
 きっとディメンターに生気を吸い取られたのだろう。そうすればもう何も残らない。意思も五感も無くなり、死よりも恐ろしい末路が待っていると去年ルーピン先生が言っていた。

「別に元『死喰い人』の1人、ディメンターの餌食となったところで問題なかろう」
「いいや、大問題じゃコーネリウス」

 再び扉が開く音がして、今度はダンブルドアが入って来た。ファッジは「ひっ」と小さく悲鳴を上げて身をすくませたが、咳払い1つすると、努めて友好的な顔をした。

「ダンブルドア、まさか高々4年生の見習い魔法使いの言葉を信じているんじゃないだろう?」
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