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ハリー・ポッターと闇の姫君

第33章 【決別】


 暗闇の中、クリスは一生懸命前に進もうと走っていた。背後から亡者共の腕が、クリスを捕まえようと襲い掛かって来る。これに掴まってはいけない、そう直感が働いていた。
 しかし腰から下が泥沼に浸かった様に思う通りに動いてくれない。それでも追手から逃げようと、クリスは懸命に足を動かした。

(誰か――誰か助けて!!)

 声にならない声を上げながら、クリスは助けを求めた。すると、目の前に1人の青年が立っているのに気が付いた。あの影は間違いない、セドリックだ。

(セドリッ――)

 セドリックの影が振り向いた瞬間、そこに立っていたのは、この世のモノとは思えない腐った死体だった。その死体が、クリスに向かって手を伸ばしてくる。

「 どうして僕が死んで 君が生きているの 」

 その言葉に、クリスは何も言えなかった。ああ、そうだ。何故セドリックが死んで、私が生きているんだ?死ぬべきは私のはずなのに……何故?何故?何故?何故――?

 そう考えていると、背後に迫っていた腕がクリスを引っ張った。反射的に振り返ると、クリスの腕を引っ張っているのは父の――クラウスの死体だった。

(父……さま……)
「 私は お前の父などではない 呪われた子よ 」

 徐々にクリスを闇の底に沈めようとする手が増え、クリスは体の半分以上が沈んでいた。クリスはなんとか沈みまいと抵抗したが、動けば動くほど体は闇の奥底へと沈んでいく。
 あと一歩という所で、突如目の前が光に包まれ、クリスは今度こそ誰かが助けに来てくれたのだの思った。だが、光の中に立っていたのは、肖像画でしか見た事はないが、間違いなく母の姿だった。
 しかしその顔に温かい笑みは無く、まるでこの世の醜いもの全てをかき集めた汚物を見る様な目つきでクリスを見下ろしていた。そしてゆっくりと口を開きこう言った。

「 お前なんて 産まれてこなければ良かったのに 」

 その言葉を最後に、クリスは抵抗する事を止め、引きずられるまま闇の中へと沈んでいった――。
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