第32章 【幕引き】
「自白剤の中でも1番強力な『真実薬』を持ってきました」
ダンブルドアはスネイプから小瓶に入った薬を受け取ると、クラウチJrの口を無理矢理開き薬を飲ませ杖をかまえた。
「エネルベート!!」
ゆっくりと、まるで深い眠りから目覚めた様にぼんやりとクラウチJrが目を開けた。薬の所為か焦点が定まっておらず、ボーっと空中を見つめている。ダンブルドアがウィンキーを押しのけ膝をついて顔の高さを合わせた。
「君に質問がある、答えてくれるかね?」
「はい」
「君はどうやってここに来た?アズカバンからどうやって脱獄して来たのじゃ?」
確かにそれは疑問だった。『憂いの篩』の中で、ディメンターに連れていかれたのは確かにクラウチJrだったはずだ。
クラウチJrは、焦点の定まらぬまま、操り人形のように口を開いた。
「母が助けてくれました。母は憔悴しきって、死が近づいていた。母の最期の願いとして、俺と入れ替わるよう父を説得しました。2人は俺の所に面会に来た際、母の髪を入れたポリジュース薬を飲み、難なく入れ替わりアズカバンを出ました」
「バーティ坊ちゃま!それ以上はおっしゃらないで下さい!!お父様がお困りになられます!!」
しかしウィンキーの涙もむなしく、クラウチJrは淡々と話しを続けた。
「ディメンターは目が見えない。弱った母と俺が入れ替わるのに気づきもしなかった。それから父は俺を家に連れ帰り、母の死を偽り葬式をあげた。身内だけの静かな葬式だった。そして俺は世間から身を隠すため『服従の呪文』を掛けられ『透明マント』を着て屋敷しもべの世話を受けながら生活した。しかし俺はいつしか『闇の皇帝』を探し出し、お助けする事を強く願った」
「坊ちゃま!もうお止めくださいまし!これ以上お話してはならないので御座います!!」
「君がまだ生きている事を、誰か家の人以外に知られた事はあるかね?」
ダンブルドアが質問すると、クラウチJrがコクリと頷いた。ウィンキーはクラウチJrの胸にすがって泣き叫んでいたが、誰も止めるものは居なかった。