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ハリー・ポッターと闇の姫君

第32章 【幕引き】


「先生……ここは?」
「ここはわしの部屋だ。さあハリー、続きを話せ。それで『あの人』はどうした?戻った『死喰い人』に何をした?罰したか?」
「はい……『磔の呪文』を唱えて――」
「それで終わりか?『闇の皇帝』を裏切り、まんまとアズカバン行きを免れた連中が、たった『磔の呪文』1つで終わりだったのか!?」
「……はい」

 ハリーには何故ムーディが腹を立てているのか分からなかった。それに今、ヴォルデモートの事を『闇の皇帝』と呼んだ。ハリーは今まで、ヴォルデモートの事をそう呼ぶ人間は『例のあの人』の支持者ばかりだった記憶がある。
 ムーディは魔法のかかった担架の上で眠るクリスを、大切そうに抱きかかえ長椅子の上に寝かせた。

「ああ……『闇の姫君』も御可哀相に。きちんと『闇の皇帝』のお傍で育てられていたら、その力を如何なく発揮できたものを……」
「え?――先生、今なんて?」

 『闇の姫君』、そうクリスを呼んだ。なぜ先程からムーディはまるで自分が『死喰い人』であるかのような振る舞いをするんだろう。
 その時、ハリーの脳裏に閃きが奔った。だがそれは恐ろしい予感だった。しかし――ハリーは自分を奮い立たせ、思い切ってムーディに問いただした。

「先生……先生が、もしかして、炎のゴブレットに――僕の名前を入れた?」

 ムーディはやおら振り返って、両方の瞳でハリーを真っ直ぐ見つめた。

「気づくのが少々遅かったようだな、ハリー・ポッター」
「そんな……まさか……カルカロフのはずじゃ……」
「カルカロフ?あやつは逃げ出したわ。今夜『闇の印』が焼けるのを感じてな。奴はアズカバン行を免れるために沢山の『死喰い人』を裏切った。今更出て行っても殺されるだけだと思ったんだろう。だが逃げ出しても『あのお方』はきっと見つけ出して奴を殺すだろう。そう言う方法にも長けておられる……」

 ジリジリと距離を詰めると、ムーディはハリーの目の前に杖を突きつけた。ハリーは身動き1つとれず、ただじっとしているしかなかった。下手に動けば殺される。そう確信があった。
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