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ハリー・ポッターと闇の姫君

第31章 【偽りの使徒】


「しかしこの女に呪文をかけすぎてしまった所為で……挙句の果て心身ともに使い物にならなくなってな」

 ――始末した。と蛇によく似た顔で、男は冷たく言い放った。その吐き気を催す邪悪に、クリスは心の底から嫌悪した。

 本当に、本当にこんなものが自分の父親なのか?この体に、こいつと同じ血が流れているのか?セドリックを殺した奴と、同じ血が――。
 クリスの体からどんどん憎しみが湧いてきた。クリスは下唇を噛み、密かに怒りに震えていた。

「さてさて、話はここくらいにしよう。折角の俺様の復活祭だ。それに相応しいショーを見せようじゃないか!まずは――ハリー・ポッター!」

 『例のあの人』はハリーに向かって杖を振り上げた。するとハリーを縛っていた縄が解け、円陣の真ん中に来るよう指示した。

「決闘だ!俺様が貴様などに劣ってなどいない事を今ここで証明してみせる!!」
「ハリー!逃げろ!逃げるんだハリー!!」
「煩い小娘だ、黙らせろ」
「……御意に」

 クラウスは『例のあの人』から遠ざかり、クリスを取り押さえたまま『死喰い人』達の円陣に加わった。召喚の杖は、隣りに立つ『死喰い人』が持っている。杖はローブのポケットにあるが、両手を封じられた今では手も足も出ない。

 どうすれば良いんだ、このままではハリーは死んでしまう。どうにかしてこの状況を打破しなければ。そう焦れば焦るほど頭は混乱して良い案が浮かばない。
 いや――良い案もなにも無いのかもしれない。ここで大人しく死を待つ運命なのだろうか……。

 しかしハリーの目を見た時、クリスはハッとした。ハリーの瞳は、死を待つ人間の瞳ではない。抗う人間の瞳だ。
 そうだ、考えろ。考えろ、考えろ、考えろ、何か良い手があるはずだ。打開策は、絶対にある――。

「――何を考えているか知らないが、余計な事はしない事だぞ。下手に騒いでも死期を早めるだけだ」

 頭の上から声がした。見るとクラウスが、ハリーと『例のあの人』を見据えたまま、クリスに話しかけてきたのだと分かった。
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