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ハリー・ポッターと闇の姫君

第31章 【偽りの使徒】


「……本来ならば、ここにはレストレンジ達がいた。――誰よりも忠実で、アズカバン送りになった。アズカバンが解放されたあかつきには最高の栄を与える事になる」
「しかし我が君、アズカバンには例の看守が――」
「なに、忘れてはおらん。ディメンター達も再び仲間に引き入れる。巨人たちもだ。俺様が頂点に立つために相応しい忠実なる奴隷たちなのだからな!」

 クリスは気が付くと、クラウスに後ろから抱きかかえらる様にしてやっと立っている状態だった。
 こんな現実があって良いはずがない。セドリックが死んで、『例のあの人』が復活して、そして事もあろうに自分の本当の父親だったなんて。こんな現実は嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ――。

「我が君、どうぞお答えください。どうやって彼方様は力を取り戻したのでしょう……この奇跡を、どうぞお教えください」
「良い質問だ、エイブリー。事の始まりは、そう……ここにいる我が賓客、ハリー・ポッターを殺そうとしたことから始まる。俺様がこやつを殺そうとした時、母親が身を挺して息子を庇った。それは古代からある単純だがとても強い魔法だ。その魔法によって、俺様は力を失い、触れる事すら出来なくなった。しかし――」

 『例のあの人』はそこで言葉を切ると、ゆっくりとハリーに近づき、ヘビが這いずる様にその頬を細い指でざわっ……と撫でた。

「俺様が開発した魔法薬――忌まわしき父の骨と忠実なるしもべの肉、そして仇であるハリー・ポッター自身の血を混ぜ合わせたエキスと呪文によって弱点を克服し、完全体として俺様の体は復活を遂げたのだ!」

 その場にいた『死喰い人』全員が驚いたように声を上げた。『例のあの人』はうっとりとした顔で空を見上げると、さらに話しを続けた。

「そして天は俺様に味方した!休息の為に立ち寄ったある宿屋で、魔法省のバーサ・ジョーキンズなる女と出会った。この女は色々吐いてくれたぞ。クディッチ・ワールドカップの事から三大魔法学校対抗試合の事まで。そして俺様に忠実なしもべが隠れている事までな!」
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