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ハリー・ポッターと闇の姫君

第31章 【偽りの使徒】


 そう言って、ローブのすそにキスをしようとした。その瞬間クリスが反射的に足を引こうとしたら、意図せずそれがクラウスの額に当たってしまい、クラウスは小さくうめき声を上げた。
 クリスは咄嗟に謝ろうとしたが、絶望と、裏切られていたと言う衝撃に、口から出てきたのは、思いとは裏腹の言葉だった。

「……嘘つき……この嘘つき!嘘つき!嘘つき!騙したんだ!私を騙していたんだな!!」
「ハハハハハ!威勢がいいな、流石は我が娘よ!さて、折角の再会だ。もっと観客が必要だな。ワームテール!!」
「ハッ、ハィィィ!!」

 それまで隅の方でうずくまっていた小男が、ヒイヒイうめき声を上げながら出てきた。コイツは――間違いなく1年前に取り逃がした裏切り者のワームテール――ピーター・ペディグリューだ!

 ワームテールは『例のあの人』の傍に行くと、左腕を差し出した。そしてクリス同様真っ赤になった『闇の印』に『例のあの人』の細くて長い白い指がふれた瞬間、クリスの左腕がまた焼き鏝を当てられたかのように痛んだ。
 するとまるで風が止まったかのように、空気が一変した。そして墓地の暗闇から、仮面を被った『死喰い人』達がぞろぞろと出てきて『例のあの人』を取り囲むように円を作った。

「良くぞ戻ったぞ諸君――いや、良く戻って来れたな、と言うべきかな?」

 『死喰い人』がざわついた。そして許しを請う様に1人、また1人と輪を離れ『例のあの人』の足元にキスをした。
 全員が再び輪に戻ると、『例のあの人』は杖を振り『死喰い人』全員に『磔の呪文』をかけた。途端に耳の奥にこびり付く様な想像を絶する悲鳴に、クリスは思わず目を閉じ耳を塞いだ。

「これだけで許した俺様は寛大だ。何故ならお前たちは俺様を裏切った。俺様がとっくの昔に死を克服していた事を知っていながら、この小僧に打ち負かされたと勘違いして、無実を主張し、罪を逃れのうのうと暮らしていた!その間、俺様はゴーストよりも矮小な存在となり、惨めな生を送っていたと言うのに!!」
「お許しを……我が君!」
「許してやろうとも。しかしそれ相応の対価は払ってもらうぞ」
「有難き幸せでございます、我が君」
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