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ハリー・ポッターと闇の姫君

第31章 【偽りの使徒】


「煩いぞ小僧、今暫く待っていろ。その後――じっくり相手をしてやる」

 ヴォルデモート、そう呼ばれた男はハリーに杖を向けた。するとハリーは耳をつんざくような悲鳴を上げ身を捩った。

「ハリーーッ!!」
「おおっと、どこへ行こうと言うんだ?折角の親子の再会ではないか。もっと喜んだらどうだ?」

 ペロリ、と男は舌なめずりをした。そして1歩1歩ジリジリとクリスとの距離を縮めて来た。
 クリスは後ずさってなんとか逃げようとしたが、ドンッ、っと何かにぶつかって退路を断たれた。振り返ると、そこには父・クラウスが立っており、クリスを逃がさんと両腕を押さえた。

「と、父様……これは何の冗談です?それに、ここは何処ですか?どうしてハリーが?それに、ヴォルデモートって……」
「クラウス、貴様まさかこの娘に事実を伝えていなかったのか?」
「……恐れながら、我が君……」
「仕方がない、ならば教えてやろう。お前の父はクラウスなどではない、この俺様だ!お前の母の村を焼き払い、凌辱し、無理矢理お前を孕ませたのは他の誰でもない、この俺様だ!!」

 この時の衝撃を、どう言葉にすればいいのか分からなかった。
 到底信じられない、自分が、『例のあの人』の娘だって?嘘だ、だって記憶の中の父と母は、あんなに愛し合っていたのに――。

「うそ……ですよね?父様、私が……『例のあの人』の、娘、だなんて……」

 クリスはすがるような気持ちで振り返った。嘘だ、いや、むしろ夢だと言って欲しかった。
 本当は自分はまだベッドの中で、中々起きないクリスに呆れて、みんな大広間で朝食を取っている。そして自分はまるで夢遊病のごとくふらふら紅茶を飲みに大広間にやって来る。そんな日常が待っていると誰かに言って欲しかった。
 しかし、現実は非常だった。クラウスは掴んでいた手を離すと、クリスの足元にひざまづいた。

「クリス――いえ、闇の姫君よ。今まで父と偽り、貴女様に無礼を働いたことを深くお詫びします」
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