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ハリー・ポッターと闇の姫君

第31章 【偽りの使徒】


 体がねじれる様な感覚が終わったかと思うと、クリスはぼうぼうに伸びた草の上に立っていた。いったい此処は何処だろう……取り巻く空気がホグワーツとは全く違う。クリスは父から少し体を離し、顔を仰ぎ見た。

「父様、ここは――?」
「ようやくやって来たな、クラウス」

 その声を聞いた瞬間、クリスの背筋が凍り付く様な不気味な気配がした。振り返ると見知らぬ男が立っていた。
 いや、男と言って良いのだろうか。その顔は人間離れしており、まるでヘビの様な顔をしていた。体毛は一切無く、瞳は血のように赤い。肌は透き通るように白く、鼻の代わりに小さな切れ目があり、薄い唇に色は無かった。――怖い。クリスは心の底からそう思った。

「クリス!?クリス、早く逃げて!!あいつが復活した!君も殺されるぞ!!!」

 聞き覚えのある声に辺りを見回すと、クリスの立っている場所から数メートル離れた墓石に、ハリーがロープで縛り付けられて身動きが取れなくなっている。
 いったい何が起こっているんだ?ここは何処だ?それに何故ハリーがここに居る?そして――この男は誰だ!?

「父様……?ここは何処です?それに、何故ハリーが……?」
「それには俺様自ら答えてやろう、愛しい――我が娘よ」

 ヘビそっくりの男が、ニヤリと笑って口を開いた。――我が娘?何を言っているんだろう、私は……グレイン、そう、クラウス・グレインの一人娘だ。間違いない。だが、どうして父様は否定してくれないんだろう。何故何も言ってはくれないのだろう。

「クリス!そいつがヴォルデモートだ!奴が復活した!セドリックも殺された!早く君だけでも逃げるんだ!!」
「セドリックが……殺された?」

 ハリーの少し離れた所に目をやると、まるで人形の様に手足を投げ出して転がっている『モノ』がある。あれがセドリックだとでもいうのか。
 いや、そんな訳がない。だってあのセドリックが、あの温かい笑顔が、あんな無残な形で永久に失われてしまったなんて……。
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