第30章 【指し示す者】
「それでは試合形式をご説明しましょう!!この巨大迷路のあちこちに障害物が設けてあり、選手達はそれを突破してゴールを目指します!見事一番初めにゴールに辿り着いた選手が優勝となります!それでは選手の皆、準備は良いかな?3・2・1――」
ピーッという甲高い笛の音がなったと同時に、これまで以上の歓声が上がった。
この迷路はこれまでの点数が高い順からスタートする事になっている。しかし迷路のあちこちに行く手を阻む障害物が置かれ、誰が最初に優勝杯を手にしてもおかしくない仕組みとなっているのだ。
最初のホイッスルが鳴ると、クリスは両手を胸の前で組み、ハリーとセドリックの無事を祈った。もし命の危険を感じたら、赤い閃光を上げて生垣の周りを巡回している先生方に救援を求める事が出来るが、救援を求めたその時点で脱落するシステムになっている。
どうかハリーやセドリックが赤い閃光を打ち上げる事がありませんようにと、クリスは祈った。
「さあ!張った張った!ハリーに賭けるやつは居るかい!?一口1ガリオンだよ!!」
「本命はセドリックだ!けどハリーも人気があるぞ!さあ試合が終わらない内に賭けてくれ!!」
「……お前の兄上たちは商魂たくましいな」
「ホンット、恥ずかしいから止めて欲しい!」
観客席の間を行ったり来たりしながら、フレッドとジョージとリーが箱を持って賭け事を仕切っている。命を懸けた試合だと言うのに、緊張感というものが全く感じられない。
だが、試合開始から20分もする頃には、みんなが賭けに乗っかり始めた。と、いうのも生垣が高すぎて観客席から試合の様子が全く見えないので、暇をつぶすものが何もないのだ。
だからみんな試合観戦に飽きて、せめて少しでも楽しみを得ようと賭けに手を染め始めたのだ。ハッキリ言ってこうでもしないとやってられない。
その内フレッドとジョージがお菓子の販売を始めると、みんなこぞってチョコバー片手に応援し始めた。