第3章 【期待と不安を胸に】
「ピーブズ!!お止めなさい!――わっ?!!」
この大惨事を止めに来た副校長のマクゴナガル先生が、水浸しになった廊下で滑りそうになり、咄嗟にハーマイオニーにつかまって何とか難を逃れた。
「失礼!ピーブズ!降りて来なさい!!」
トレードマークの三角帽子を直しながら、マクゴナガル先生は厳格な顔で怒鳴った。ピーブズはそれが面白そうに余計に水風船を落として騒ぎ立てた。玄関ホールに居た生徒達は皆、悲鳴を上げながら大広間に入って行った。これ以上ここに居てはまた水風船を落とされかねないと思ったクリス達は、マクゴナガル先生の誘導のもと大広間に急いで退却した。
大広間でも、雨でやられたのか、それともピーブズにやられたのか知らないが水浸しの生徒ばかりだった。それでも大広間に温かさと、やっと一息つけるという安心感に、クリス達はほっと息を吐いた。
「まいったよ、早く組み分けを終えてご馳走を腹いっぱい食べたいな」
「私はそれよりも、シャワーが浴びたい。頭のてっぺんからつま先までグショグショだ」
「僕も。スニーカーの中が水びたしだよ」
ハリーはグリフィンドールの席に着くと、スニーカーを抜いて中にたまっていた水を捨てた。
大広間は例年通り見事な装飾がなされ、空中に浮かぶ何千という蝋燭が、金のお皿をキラキラ輝かせている。本物の空を映す魔法の天井は、生憎ゴロゴロと雷鳴を轟かせ真黒い雲と大粒の雨を映していたが、それでもこれから組み分けをして美味しいご馳走が出てくると思うと、興奮を抑えられなかった。
「ああ、早く始まらないかな」
「今年はまだ時間がかかるんじゃない?天候はこんなのでボートで来る1年生は大変だろうし、それにマクゴナガル先生はまだ玄関ホールにいらっしゃるみたいだし」
「そう言えば、教職員テーブルも何席か空いてるな」
クリスは教職員テーブルに目を向けた。マクゴナガル先生はピーブスの悪戯を止めさせるのに手こずっている様だし、ハグリッドはまだ到着していない。残る空席は……『闇の魔術に対する防衛術』だ。
今年はいったいどんな人が来るんだろう。ホグワーツに入って4年目だが、この科目は1年以上先生が続いたことが無い。1年前、クリスが恋に落ちたルーピン先生も、狼人間だからという理由で辞職してしまった。