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ハリー・ポッターと闇の姫君

第29章 【来るべき時】


「とにかく今夜はもう寝ましょう。色々あったし」

 時計の針が12時を指すなり、ハーマイオニーがそう言った。皆頭がいっぱいだったし、何よりクリスは半日の間に色々あり過ぎて精神的に疲れていたので、その意見に賛成した。
 寮に戻り、着替えてベッドに入ると、クリスは召喚の杖を抱えながら、そっと左手首の痣を撫でた。

 父はどんな気持ちで『例のあの人』に従っていたんだろう。最愛の妻と我が子を人質に取られ、逃げ出す事も抵抗することも出来ず、ただ命令されるがまま人を殺していたのだろうか。
 それに『憂いの篩』で見たやつれきった姿。間違いなくアズカバンに居た証拠だろう。獄中を、父はどんな気分で過ごしていたんだろう。

 本来なら、愛する妻と娘と3人で静かに平穏に暮らせたはずなのに――全ては『名前を言ってはいけないあの人』の所為だ。奴さえ居なければ、父も母もクリスも要らぬ不幸を背負う事などなかったのに。
 全ては奴が――そんな事を考えながら、クリスは深い眠りについていった。


 翌週から、クリス達一般生徒は試験勉強に取り組まなければならなくなってきたが、出来るだけハリーの課題を手伝う為、空き教室で呪いの練習をした。
 ハリーはハーマイオニーの次に飲込みが早く、もう『妨害の呪い』と『粉々呪文』を習得しつつあった。
 その他にも図書館で見付けてきた『四方位呪文』は杖の先が北の方向を指してくれるので、迷路を突破するのに大変役に立つ呪文だった。

「私達、今期の『闇の魔術に対する防衛術』はきっと満点が取れるわよ」
「それに、僕らが将来『闇祓い』になる訓練になる」

 4人の頭の上をブンブン飛びまわるハチを呪文でピタリと動きを止めながら、得意げにロンが言った。クリスはあまりムーディ先生に良い印象は無かったが、他の3人は『闇祓い』と言う職業に憧れを抱いているようだった。
 ハーマイオニーは呪文のリストを作り、ハリーがそれを取得したら印をつけてハリーを励ました。
 そんな様子を見ながら、クリスは心満たされた気分だった。もうコソコソ『闇の印』を隠す必要もないし、左腕が痛んでも打ち明けられる友達がいる。これを幸福と言わないでなんという。
 幸せをかみしめながら、クリスはハリーに『盾の呪文』が出来るかチェックしてやると意気揚々と言った。
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