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ハリー・ポッターと闇の姫君

第29章 【来るべき時】


「――これで、全てだ」

 クリスは自分の知っている事を全て話した。
 父が母と自分を守るために『例のあの人』に従っていた事。2年生の時に実家の秘密の部屋で見た父と母の思い出。時々見る赤ン坊の頃の不思議な夢。先程ダンブルドアの校長室で見た裁判の記憶。そして時々痛む、『例のあの人』に施された左腕の特別な『闇の印』。それらを全て話し終えると、静寂が辺りを包んだ。

 ――全て話した。あとは3人がどう受け止めるかだ。クリスはまるで判決を受ける被告人のような心地がした。3人は何も言わなかった。ただ何も言わず、下を向いていた。

「やっぱり、今までと同じように……とはいかないか」

 まるで水を打った様に、クリスの心は静かで落ち着いていた。今更慌てても仕方がない。ただ……出来ればこれからも友達でいたかった。だがそれは無理の様だ。

「ありがとう、今まで友達でいてくれて」
「……んだよ、それ……」
「ハリー?」
「何だよそれ!まるでもう友達じゃ無いみたいに言うなよ!!」

 ハリーは力強い視線でクリスを見つめると、ガバッとクリスを抱きしめた。それにつられる様にして、ロン、ハーマイオニーも抱きついてきた。

「さっきも言ったじゃないか、痣の事なんて気にしない。君は僕の友達だって。これまでも、これからだってそうさ!だから……だからこれ以上自分を責めないで」
「ハリー……」
「ホント馬鹿だな。僕らが君を見捨てると思う?僕らはもう君と離れる事なんて出来ないのに」
「ごめんなさい、クリス。私、あなたの1番近くに居たのに、何もわかってあげられなくて……」
「ロン……ハーマイオニー」

 クリスは涙が込み上げてきた。それをぐっと抑え、瞼を閉じた。
 ああ、もっと早くに言えばよかった。そうすれば余計な心配を独りで抱える必要なんてなかったのに。3人に抱きしめられながら、クリスは巡り合えた3人の素晴らしい友人と、それを教えてくれたセドリックに感謝した。

 それから談話室に戻ると、改めてダンブルドアの校長室にあった『憂いの篩』で見た事と、夢の話しを4人で話し合った。
 勿論シリウスに手紙を書くことも忘れてはいない。長時間話しあった所為で、皆がいなくなる頃には頭が混乱して、誰が怪しくて誰が怪しくないのか訳が分からなくなっていた。
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