第29章 【来るべき時】
「……1つ聞いて良いか?それは綺麗な金なのか?」
「キレイもキレイ、まっさらさ!自分たちで実験して開発した商品を売った、努力の賜物さ」
「言っておくが商売に関しては、一切汚い手なんか使っちゃいないぜ」
「まあ、それなら良いが……」
「だからこの事、パパとママにだけは、絶対に内緒にしてくれよ。将来悪戯専門店を開きたいなんて言ったら、2人ともなんて言うか……」
「それと、ロンにも言うなよ。どこから話が筒抜けになるか分からないからな」
「……分かった」
それがどんなものであれ、誰にでも話したくない秘密と言うのはあるものだ。今のクリスにはそれは痛いほどよく分かる。
フレッドとジョージは最後にもう1度クリスに念をおすと、どのフクロウに手紙を託すかを相談し始めた。それにしても悪戯専門店か――2人にはピッタリかもしれないが、仮にも父親が魔法省のお役人に対し、息子達が将来性のない仕事に着きたいと言ったらご両親は何て言うか……想像に難くない。
とにかくここにハリー達がいない事が分かると、クリスは外に出た。あと想像がつく場所といば、ハグリッドの小屋か図書館くらいだ。まず、クリスはハグリッドの小屋に行った。しかしハリー達は居なかった。
残る図書館に行くと――居た。奥のテーブルに、いつもの見慣れた姿があった。
こうして3人の姿を見るのは、もう何度目だろう。3人は何か話し込んでいて、クリスに気づく気配すらない。クリスはゆっくり近づいて行った。
「――やあ」
「クリス……」
「3人に話があるんだけど、良いかな?」
不思議と恐怖は無かった。ただ、遂に来るべき時が来たと言う思いだけがあった――。