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ハリー・ポッターと闇の姫君

第28章 【憂いの篩】


 ダンブルドアが『憂いの篩』の水面を杖で突くと、またバーサは光る糸状の物に戻って、篩の中に揺らめいて消えてしまった。

「さて、ハリーの話しを聞いたから、今度は君の話しを聞く番じゃ。と、言うても察しは付いておるがの」

 もうクリスの中で葛藤もクソも無かった。この2人は十分にクリスの秘密を知っている。クリスは右手で左ローブの袖を掴むと、一気に肘までたくし上げた。そこには骸骨の口から蛇が飛び出している模様の痣が、黒々と浮かびあがっていた。

「先生、ハリーの傷が痛んだのと同時に、私の痣も痛みました。1年生のあの時と全く同じです」
「その様じゃな。痣が痛んだ事はこれまでには?」
「ありましたが、今回ほどではありません。痣がこんなにハッキリしたのも今回で2度目です」
「そうか……ハリーはどうじゃ?傷が痛んだ事は夏休み以外にあったかのう?」
「いいえ、特には――って、どうして先生が夏休みの事をご存じで!?」
「シリウスと連絡を取っていたのは君だけではない。ついでに言うと、シリウスに安全な隠れ家としてあの岩山の洞穴を教えたのもわしじゃ」

 それでようやく合点がいった。いくらあのシリウスでも、脱獄してまた再び捕まるヘマを犯すほど馬鹿ではない。ダンブルドアのお墨付きをもらっているから、安心してホグズミードまで戻ってきたのだ。それを聞いて少しホッとした。

 ダンブルドアは何本か光る糸状の『憂い』を篩に入れると、それをゆすって篩の中に収めた。それをぼんやり眺めていたハリーだったが、耐え切れず疑問を口にした。

「あの、先生。先生は、どうして僕達の傷が痛むのかお分かりですか?」
「ふむ……これは仮説じゃが、わしの考えではヴォルデモートが君達の近くに居る時、または強烈な憎しみにかられている時じゃろう」
「でも、どうしてですか?」

 そこでダンブルドアは篩から手を離し、組んだ指に顎を乗せ黙った。いつも大広間で見せる顔つきではない。真剣で、何もかも見通すようなそんなブルーの瞳でハリーとクリスの顔をジッと見つめた。

「ハリー、君とヴォルデモートはかけ損ねた呪いを通して繋がっているとわしは仮定しておる」
「それじゃあ先生……私は?」
「クリス、君はその『闇の印』じゃ。君の『闇の印』は、少し特別みたいでな」
「特別?」
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