第27章 【裁判】
その名前を聞いた時、クリスは思わずハリーと顔を合わせた。もしかしてと言う予想はあったが、まさか裁判の席でスネイプの名前を耳にするとは思わなかった。クラウチ氏は、厳格な顔を崩しもせず冷たく言い放った。
「セブルス・スネイプの無実はもう証明されている」
「まさか!!?」
「スネイプは『例のあの人』が失脚する前からこちら側に戻り、悔い改め、今度は自らの危険を犯して密偵となってくれた。その事はアルバス・ダンブルドアが証明している!」
「そんな事ない!あの男は確かに――」
「宜しい!カルカロフ、情報は以上だな、では再びアズカバンに戻ってもらおう。審査の沙汰はおって知らせる!!これにて閉廷!!」
クラウチ氏が木槌を打つと、またガヤガヤと周りから話し声が交差した。その中で、クリスが小さく呟いた。
「……本当だと思うか?ハリー」
「分かんないよ、僕にも……」
「そう……だよな」
体が固まった様に動けなくなった2人は、ベンチに座ったまま辺りが渦を巻いて変化していくのをただ待っていた。
今度も同じ部屋で、すぐ傍にダンブルドアとムーディが座っていた。違っていたのは、中央に並べられた椅子の数と、クラウチ氏の隣に座る、泣き果てて憔悴しきった女性が1人いた事だった。女性はハンカチに顔を埋め、時々しゃくり上げてはまた涙を流した。
「入れ!」
クラウチ氏の一段と厳しい声が部屋中に響いた。今度は4人の男女と6体のディメンターが入って来た。すると傍聴席の視線が、ちらちらクラウチ氏とその隣の女性に向けられているのに気づいた。
クラウチ氏はそれを無視しようと、入って来た4人の被告人に括目した。
入って来た被告人を手枷の付いた椅子に座らせると、他の3人とは別に、1番若い茶色い髪をした少年が場違いの様に体を恐怖で震わせ、小鹿のような潤んだ瞳でクラウチ氏を見つめていた。
それを見て、クラウチはこめかみをピクピク動かし、隣りに座っていた女性はワッと泣き出して、ハンカチに嗚咽を漏らした。