第27章 【裁判】
ダンブルドアはクリスからそう席の離れていない、2、3段下の席に座っていた。その斜め後ろにムーディの姿もあった。まだ両目とも健在で、髪も黒々としている。
「ハリー、ここはダンブルドアの記憶の中だ。あの器は記憶をしまうことが出来るんだ」
「じゃあ……ここに居る人たちは、みんな記憶の中の人って事?」
「ああ、多分ダンブルドアの記憶の中だと思うが……何の記憶だかは分からない――シッ!」
クリスが静かにするよう、唇に人差し指を押し当てると、3人の人影が部屋に入って来た。するとざわついていた人達が一斉に静かになり、3人の人影を見つめた。
いや、人間は1人だけで、他の2名はディメンターだった。記憶だと分かっていても、ディメンターを見ただけで背筋が凍るような思いがした。
「イゴール・カルカロフ!!」
1人の男が、中央の椅子に座らせら手枷を着けらると、檀上から聞いた事のある男の声がした。よく見るとクラウチ氏だった。それに椅子に座っているのは、間違いなくカルカロフだ。
2人とも10歳以上若く見えたが、カルカロフはディメンターの影響か、顔色が悪く心身ともに不健康そうだった。
「お前は魔法省に有力な証言をし、まだ残っている『死喰い人』達を捕まえる手助けをするためにアズカバンから呼ばれた。相違ないな?」
「はい、ま……間違いありません」
「汚い奴め!」
ダンブルドアの向う側から、ムーディの声が聞こえた。嫌悪感を露わにし、怒りに震えている。ここまで怒ったムーディの声は聞いた事がない。
「『死喰い人』の残党の情報を教えれば、アズカバンから出られると魔法省と契約して出てきた小悪党めが!お前のおかげで何人の若い『闇祓い』が死んだと思っているんだ!!」
「落ち着けアラスター、まずはカルカロフの話しを聞こうじゃないか」
静かな声でダンブルドアが言った。半月形の眼鏡の奥からは、いつも少年の様にキラキラ輝いているブルーの瞳ではなく、思慮深い青い色を湛えていた。