第27章 【裁判】
「ダンブルドア、私にはちっとも分かりませんよ!ルードが言うには、バーサはいつ行方不明になってもおかしくない人物だって言うじゃありませんか!!」
「この声……ファッジだ!魔法省大臣のコーネリアス・ファッジ!」
「何を怒鳴っているんだろう?」
不思議に思ったハリーとクリスは、もっと会話を聞こうと扉にくっついて耳をそばだてた。
「確かに今頃はもうバーサを発見していても不思議ではないが、それとバーティ・クラウチの失踪を結び付けるなんて見当違いも甚だしい!!」
「ほう、それではクラウチに何が起こっているとお考えかな?」
鋭くえぐる様な声、これは聞き覚えがある。ムーディ先生だ。
「考えたくはないが、クラウチはついに正気を失ったか――まあ、ああいう経緯のあるお方だ、その可能性がないわけでもない。それに発見したのが、例の……ハリー・ポッターだと言うではないですか」
「それでは、ハリーが嘘をついているとでも?」
段々尻すぼみになるファッジに声に対して、今度は優しいダンブルドアの声が聞こえてきた。ファッジはもごもごと何か言い訳を考えているようだったが、なにも思いつかなかったらしい。
「ポッターが嘘をついているかどうか、本人に確かめてみたらどうだ?大臣殿。ちょうど今扉の外にグレインと一緒に居るぞ」
忘れていた、ムーディの『魔法の目』は扉くらい簡単に見通すことが出来るのだ。2人は弾かれたように扉から身を離すと、とたんに扉が開いた。
心の準備をしていなかったので、クリスは顔が引きつっていた。校長室の中に、ダンブルドア、ムーディ、ファッジ大臣を見て堂々としていられる人間の方が少ないだろう。
だが、ハリーは違った。ファッジがやけに友好的な態度で挨拶をしても気にも留めていなかった。それよりハリーは、ダンブルドアと話したい気持の方が大きいように見えた。
「あの……お話の途中申し訳ありませんが、僕、至急ダンブルドア先生とお話ししたい事があって――」
「すまんがハリー、我々にはせねばならん仕事があるんだよ。授業に戻っては――」
「いや、ハリー。ここで待っていなさい、直ぐ戻る。ミス・グレインは――」
「私も――先生とお話が……」
「分かった、2人とも待っていなさい。わしが戻るまでここを離れるでないぞ」