第26章 【消えたクラウチ氏】
ロンの言う通り、後1か月後の第3の課題までハリーが生き残れば、長かった命の心配をすることも無くなる。
しかし、第3の課題はハリーの命を狙っている相手――『例のあの人』にとっても最後のチャンスとなるのだから一番危険だともいえる。
とにかく敵がどこに潜んでいるのか分からないのだ。気を引き締めて取り掛かる事に越したことはない。
それから1週間あまり、4人でハリーの魔法の特訓を始めることにした。図書館で役に立ちそうな呪文を見付けては試してみる日々が続き、魔法をかけられる相手であるロン、クリス、ハーマイオニーは少々痛手を負う事になった。
「フィルチを練習代に出来ないかな?」
ある日、『失神の術』の練習をしていた時、ロンが頭を押さえながら言った。ロンが練習台になるのはもうこれで15回目だ。
流石のハリーも、女の子相手に『失神の術』をかけるのは気が進まないのか、クリスとハーマイオニーが練習台になるのは稀で――特にクリスは呪文をかけようとするともの凄く嫌そうな顔をするので――ロンばかり魔法をかけられることになり、ロンの体は打ち身とたんこぶだらけだった。
「文句言わないで、これもハリーの為よ」
「だったら君もやれよ、結構痛いんだぜ?これ」
「良いわよ……1回だけなら」
弱腰になったハーマイオニーが、小さな声で言った。
「良いよ、もう。『失神の術』はもうコツを掴んだし」
「それじゃあ今度は別の呪文を練習しよう。これなんてどうだ?『妨害の呪い』」
クリスは5年生用の呪文集のページをめくりながら、何か良い魔法は無いかと探していた。すると丁度その時昼食の休憩を終えるチャイムが鳴り、4人は空き部屋から出た。
そしてハーマイオニーは『数占い学』へ。ハリー、ロン、クリスの3人は『占い学』の教室へ向かった。
占い学の教室は、いつにも増して暑くてムワッとするお香の匂いが漂っていた。ここの部屋の暖炉の火が消されることはないのだろうか?こんな暑苦しくて臭い部屋に一日中いるから、トレローニー先生の頭はおかしくなっていくのではないかとクリスは密かに思っていた。