第26章 【消えたクラウチ氏】
「悩みなら聞いてあげますよ、お嬢さま」
「いい、結構だ」
「それは大変結構な事で、と言う意味で?」
「押し売り業者か!お前らは!」
「押し売り業者とは失礼な。僕らはただの――」
そう言って、フレッドが右手をグッと握ってクリスの目の前に差し出した。何をするのかと思ったら、突然ポンッと言う音と共に1輪の可愛い花が手から飛び出して来た。
「――ケチな魔術師ですよ」
「さあ、どうぞお姫様」
クリスは差し出された花を受け取った。なんだかそれを手に取ると、不思議なことに不安な気持ちが和らいできた。
「……馬鹿だな、お前らも」
「それは僕らにとって褒め言葉」
「何ならトンマにマヌケを足したって良い」
この2人を見ていて、クリスは悩んでいたのが馬鹿らしくなってきた。
もう道は決まった、いや、決まっていたんだ。こんな風に自分を気にかけてくれる友人がいる。勿論フレッドとジョージだけでは無い。ハリーも、ロンも、ハーマイオニーも、他のグリフィンドールの仲間達も。
自分は『例のあの人』とは決別の道を行く。例え家族を敵にまわしても――。
考えがまとまりホッとした所為か、何だか急に眠気が襲って来た。クリスは微笑みながら1輪の花を髪に飾ると、もうひと眠りしようと女子寮に戻った。
それから数時間後、ハーマイオニーに起こされて大広間へ向かった。半覚醒状態で廊下を歩くのはもう慣れたものだ。
朝食後、ふくろう小屋へ行ってシリウス宛に手紙を出すと、そのまま『魔法史』の授業に向かった。しかし、この『魔法史』の授業がまた長いこと、長いこと。クリスはイライラしながら指で机を叩いていた。
ようやく授業が終わると、4人で真っ先にムーディ先生に会いに行った。
「ムーディ先生!」
「おお、お前かポッター」
ハリーが声をかけると、ひん曲がったムーディ先生の唇がより曲がった。ムーディ先生はハリーが来ることを予測していたのか、近くの空き教室に4人を引き入れた。
「それで、クラウチさんは見つかったんですか?」
「いや、儂の目をもってしても見つからんかった」
ムーディ先生は携帯用酒瓶をグイッと呷った。ハリーは『忍びの地図』を使ったかどうか訊ねた。