第26章 【消えたクラウチ氏】
ハリーの口ぶりでは、まだ真相は掴めていないらしい。再び謎が謎をよんだ。
「それじゃあ誰がクラウチさんとクラムを襲ったんだ?」
「分かった!クラムがクラウチさんを襲った。そして自分に『失神の術』をかけて――」
「――クラウチさんは消えた。と言いたいわけ?」
「あー……そうか、ちがうね……」
ロンがしょぼんとして下を向いた。
もう真夜中だった。ついさっきあった出来事をどうしてもシリウスに伝えたかったが、ダンブルドアに「朝まで待つ様に」と固く禁じられたらしい。
仕方なく、少しでも記憶の鮮明な夜の間に手紙を書いて、早朝ふくろう便を出す事にした。
翌朝、クリスは徹夜で朝を迎えた。流石のクリスも『例のあの人』がより強くなったと聞いて、すやすや眠っていられるほど豪胆な持ち主ではない。
それに左腕の痣、確かに日に日に濃くなってきている。ハリーは支離滅裂だったと言っていたが、クリスには分かる。間違いなく『例のあの人』は強くなってきている。この痣がその証拠だ。
クリスはベッドの上で膝を抱えると、これからどうしたら良いのか、答えの出ない自問自答を繰り返した。
眠れず、仕方なく談話室に下りて行くと早朝から先客がいた。部屋の隅で、コソコソ話をしている。ゆっくり近づいて行ってみると、フレッドとジョージだった。
「また悪戯グッズの開発か?」
「うわっ!クリス!?」
「こんな時間に何してるんだい?」
「それはこっちのセリフだ」
クリスが不機嫌そうに言うと、フレッドとジョージが両方から肩に腕を回してきた。クリスはそれを、鬱陶しそうに振り払った。今は2人のやりとりに付き合っている気分じゃない。
「おや、いつにも増してご機嫌斜めな様子」
「何かあったのかい?」
「……別に、なにも」
「それは“あった”と解釈していいのかな?」
フレッドがニヤリと笑うと、ジョージも同じ表情をした。