第26章 【消えたクラウチ氏】
ハリーがその事件に遭遇したのは、5月の第1周目の月曜日。『三大魔法学校対抗試合』の第3の課題の下見に行った日だった。午後8時半に談話室を出て行ったハリーは、9時過ぎに、まるで幽霊にもあった様な顔をして談話室に戻ってきた。
「なにぃ!?クラウチさんに会った!?」
「シーッ!声が大きいよクリス」
ハリーの話しではこうだった。第3の課題の下見に行った帰り、クラムと禁じられた森付近で話しをしていると、森からクラウチ氏が出てきたと言うのだ。
それもただ出てきただけじゃない、ヒゲはぼうぼう、髪はぐしゃぐしゃ、ローブはよれよれでおまけに体中に怪我をして出てきたと言うのだ。
しかも言っている事が支離滅裂で、「ダンブルドアに会わなければ」と目玉をギョロつかせながら凄い力でハリーのローブを掴むかと思いきや、今度は急に木に向かってパーシーと流暢に仕事の会話をしている風にも見えたと言うのだ。正直、気が狂っているとしか思えなかったらしい。
「それで、クラウチさんはなんて言ってたの?」
「とにかくダンブルドアに会わなくちゃいけないって……それで、バーサが死んだって……それと息子さんの事と、ヴォルデモートがより強くなったって」
ハリーの口から出た『ヴォルデモート』という言葉を聞いて、ロンとクリスは体を震わせた。生粋の魔法族育ちのロンとクリスにとって、その名はショックが大きい。
それからハリーは、ダンブルドア校長を呼んでくるため、クラムにクラウチ氏を任せてその場を去ったと言う。だがダンブルドア校長と共にクラウチ氏の居た所に戻ると、クラムは失神し、クラウチ氏は再び行方不明になっていたと教えてくれた。
「これは推論だけど、クラウチさんがクラムを襲った。もしくは他の第3者が2人を襲って逃亡した」
「他の第3者って誰だよ?あんな時間に森に近づく馬鹿なんていないぜ?それより、クラウチが襲って逃亡した線の方が固いと僕は思うな」
「ううん、クラウチさんはとても1人で逃げられるような体力はなさそうだった。『姿くらまし』どころか『失神の術』でさえ出来そうも無かったよ。それにその後ムーディ先生がやって来て、森の中を探してくれたけど……」