第3章 【期待と不安を胸に】
1年生の頃、ハリーの傷が痛んだ時、同時にクリスの左腕の痣にも変化があった。もし今回も同じなら『例のあの人』に何かがあったんだ。クリスにとっても良くない何かが。
それからハリーは自分が見た夢の事を話してくれた。傷が痛んだ夜に、『例のあの人』の夢を見たと。
それはピーターと――もといワームテールと――『例のあの人』が一緒になって、誰かを殺す計画を目論んでいるとハリーは言った。
もしハリーの見た夢が正夢なら、『例のあの人』は少しずつだが力をつけてきている。それに去年の学期末にトレローニー先生が言った預言も無視できない。クリスは知らず知らずのうちに左手首を押さえた。
「大丈夫?クリス、顔色が悪いわよ」
「ん、ああ。大丈夫だ。ただ……1度に色々聞いたから驚いて……」
心配そうに顔をのぞき込むハーマイオニーに、クリスはわずかに微笑み返した。
言っても良いだろうか、自分の左腕に『闇の印』がある事を。――いや、今は駄目だ。世間で『闇の印』が現れて騒動が起こっていると言うのに、自分の腕に『例のあの人』が側近に付ける『闇の印』を自分にも刻まれていると知ったら、絶対に3人ともショックを受けるだろう。それに――最悪、3人が自分から離れていってしまうかもしれない。そう考えると、とてもじゃないが言い出せなかった。
お昼になると、お菓子やジュースを沢山積んだカートを引いたおばさんがやって来た。クリスはチャンドラーお手製のサンドウィッチがあるから、飲み物と、それにおやつとしてお菓子を少し買い、ハリーは毎年通りお菓子を山ほど買った。
これから楽しい昼食の時間だと思った矢先、開け放されたコンパートメントのドアから、聞き覚えのある気取った声が響いて来た。
「――父上が仰るには、ダームストラングでは『闇の魔術』に関して相当力を入れているらしい。本当なら、僕としてはダームストラングに行きたかったんだけどね。父上とダームストラングの校長は、昔から付き合いがあるし……それにダンブルドアは『汚れた血』贔屓のいけ好かない奴だ。それに比べてダームストラングの校長はそんな奴らを入学させたりしない。だけど母上が僕を遠くの学校にやるのを嫌がったから――」