第24章 【クラウチの息子】
「君の鰓昆布のおかげで、僕命拾いしたから当然だよ。ありがとう」
「あ……ありがとうだなんて!!ハリー・ポッターはお優しすぎます!!ドビーは生まれて初めて感謝の言葉をいただきました!!」
クリスが紅茶を飲んでいる横で、ロンが「この前のエクレアが食べたいなぁ」と聞こえよがしに呟いた。するとあきれ顔のハーマイオニーの横を飛んで行きかうかの様に、素早く屋敷しもべ妖精達が銀の皿の上にエクレアを用意した。ロンはそれを両手に掴んで頬張った。
「そう言えば、スナッフルにも食料を用意しなくちゃ」
「そうだよ!良かったらピッグにも仕事をさせて。――ねぇ、悪いけど食料を少し分けてくれないかな?」
ロンが茶目っ気たっぷりに屋敷しもべ妖精達にウインクすると、周りに居た屋敷しもべ妖精達が急いで食料を用意しに走り回った。この時、クリスは確かにロンにフレッドとジョージの影を見た。
「ねぇ、誰かウィンキーを知らない?」
ハーマイオニーが辺りを見回しながら質問すると、みんな手を止めて、この話には触れたくない様に視線を泳がせた。
「ウィンキーは暖炉の前でございます、お嬢さま」
ややあって、ドビーが答えた。それもその筈、ウィンキーのありさまと言ったら前回よりもかなり酷いものだった。
着ているワンピースは1度も洗濯していないかのようにシミだらけのススだらけで、おまけにバタービールを片手に涙を流しながら「ヒック」としゃくり上げている。これでは場末の飲んだくれと一緒だ。
「ウィンキーは最近1日に6本も飲むのでございます」
「でもあれ、そんなにアルコールは入ってないよ?」
「屋敷しもべには強すぎるのでございます!」
紅茶に続き、クッキーを運んで来た屋敷しもべが非難がましい目でじろりとウィンキーを見た。はクリスクッキーを食べながら事の成り行きを聞いていた。
「ウィンキーは嘆き悲しみながら暮らしているんでございます、ハリー・ポッター。ウィンキーは元の屋敷に戻りたいんでございます。ドビーが何度今のご主人様はダンブルドア校長先生だと言っても聞かないんでございます」