第24章 【クラウチの息子】
「どういう事?」
ハリーの質問に、シリウスは淡々と答えた。
「クラウチの息子の死に際、奴は奥方と一緒に息子の面会に来た。クラウチと違い、妻は子供を愛していた。だからクラウチは権力を使って、妻と一緒に独房にやって来たんだ。私と奴の独房が近かったから良く覚えている。しかしそれから数日後、奥方も死んだらしい。どうやら息子を憐れんで憔悴しきっていたみたいだ」
その様子を想像して、みんな黙ってしまった。クラウチ氏は魔法省大臣まで手の届く距離までい他のにも拘らず、他でもないクリスの所為で全てを失ったのだ。
地位も、名誉も、息子も、愛する妻も。それを考えたら、同情して良いのか、それとも憐れんだら良いのか分からなくなった。
シリウスは座り込むと、今度はパンを片手にカボチャジュースをゴクゴク飲み干した。
「クラウチは息子の死体すら引き取りに来なかった。まあ、その所為でクラウチの評判はさらにがた落ちした。だからこそあの能無しのコーネリアス・ファッジが格上げされ魔法省大臣に任命され、クラウチは『国際魔法協力部』何て部署に追いやられたという訳だ」
「そうか!だからクラウチは『元・死喰い人』のスネイプの研究室を嗅ぎ回ってたんだ!!」
突然ロンが弾かれたように立ち上がり、どうだ!と言わんばかりにハーマイオニーに向かって笑みを向けた。
「クラウチはきっと『元・死喰い人』の1人でも捕まえれば、昔の名声が戻って来るとでも考えたんだよ」
「あら、だったらなんでクラウチさんは試合に来てないの?審査員として来ればスネイプの事を調べ放題じゃない。それに仮にスネイプ先生が黒だったとしても、ダンブルドア先生がスネイプ先生を信用して雇ったのをお忘れじゃないかしら?」
「いい加減そのダンブルドア信仰をどうにかしろよハーマイオニー。そりゃダンブルドアは凄いよ。でもダンブルドアの悪い所は、人を信用しすぎるところだ。どんな悪でも『改心しました』の一言でコロッと騙されちゃうよ。だからカルカロフなんてもの校内にうろつかせてるじゃないか」
「どう思う?シリウス」
ハリーの一言に、それまで静かに話しを聞いていたシリウスがパンを食いちぎりながら答えた。