第23章 【愛すべき野良犬】
「クラウチさん、まだ病気がよくなってないんだ……」
「あら、当然の報いよ。世話を焼いてくれる屋敷しもべ妖精をクビにしたんだもの。今頃になって慌てても遅いのよ」
「あー、気にしなくていいよシリウス。ハーマイオニーは“ちょっと”屋敷しもべ妖精に憑りつかれているんだ」
「屋敷しもべをクビにした?」
ロンの言葉より、シリウスはハーマイオニーの言葉に引っかかった様だ。クリスはその場に居なかったので、ハリーが代表して、ワールドカップの日にウィンキーと言いう屋敷しもべ妖精をクビにした時の様子を、出来るだけ事細かに喋った。
「少し話を整理してみる価値がありそうだな」
3つ目のチキンを頬張りながら、シリウスが順を追って状況を整理し始めた。
「初めは屋敷しもべが1人貴賓席に座っていて、クラウチの席に座っていた。間違いないね?」
「うん」
「しかし席を取っていたにも拘らず、クラウチは現れなかった」
「パーシーはクラウチさんが仕事で忙しくて来られなかったって言ってたよ。ああ、パーシーってのは僕の兄貴なんだけど、今はクラウチさんの下で働いているんだ」
「うむ……ハリー、貴賓席に居た時自分のポケットに杖があるかどうか確認したかい?」
「ううん、使う予定も無かったし……森に入ったときにやっと杖が無い事に気づいたんだ」
「つまりハリーの杖を盗んだ人物が、『闇の印』を作った可能性があるって事か?」
クリスの問いかけに、シリウスは頷いて立ち上った。そして頭の中を整理する様にその場をうろうろし始めた。
「ちょっと待って!ウィンキーが杖を盗んだ証拠はないのよ!!」
「ハーマイオニー、頼むから今は『反吐』の事は置いておけよ」
「反吐?」
「ハーマイオニーが始めた屋敷しもべ妖精擁護の会だよ。森で哀れな屋敷しもべ妖精に会った所為で変な会まで始めちゃって……」
「森には屋敷しもべ妖精の他に誰かいたか?」
「いなかったと思うけど――」
「居たわ!バグマンさんよ!『闇の印』が現れる直前に、私達バグマンさんに会ったわ」
「待てよハーマイオニー、バグマンさんが『闇の印』を打ち上げたって言いたいのか?」
「ウィンキーよりも有力よ」
そう言って、ハーマイオニーはツンとそっぽを向いた。