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ハリー・ポッターと闇の姫君

第23章 【愛すべき野良犬】


 それから道なりにそって歩いて行くと、柵に両前足を乗せて新聞を咥えた黒い大きな犬が、尻尾を振って待っていた。

「シリウス!」

 ハリーは駆け出して行った。その後をロンとクリスとハーマイオニーが追う。
 シリウスは食料の入ったカバンをクンクン匂いを嗅ぐと、まるでついて来いと言わんばかりに尻尾を一振りして歩き出した。

 シリウスが案内する道は、決して楽な道では無かった。周りは岩だらけの山道で、皆ハアハア息を切らしながら何とかシリウスに着いて行った。
 途中フッとシリウスの姿が消えたかと思うと、岩の裂け目に入り口があった。洞窟の中は思ったより広く、隠れ家としては上等だ。
 中では1年前シリウスがホグワーツから逃げるのを手伝ったバックビークが縄につながれていた。ハリーが慣れた様子でお辞儀をすると、バックビークもお辞儀をした。
 3人もそれに倣いお辞儀をするとバックビークは一瞬その鋭い目を光らせたが、ゆっくりお辞儀を返してくれた。

「やあ!みんな、よく来てくれた!!」

 いつの間にか人の姿に戻っていたシリウスが、4人を歓迎した。風貌は相変わらずボサボサ頭で薄汚いローブを着ていたが、もう黒く濁った闇の様な瞳ではなかった。
 ハリーが食料の入ったカバンを渡すと、シリウスは余程お腹が空いていたのか、勢い良くカバンを開いて中からチキンを取り出しむさぼり始めた。

「助かったよ、ホグズミードに来てからネズミばかり食べていたからね。あまり町から食料を盗むわけにもいかないし」

 シリウスの言葉が冗談か本気か分からず、4人はあえて苦笑いをしてその場を誤魔化した。

「でも、シリウスはどうしてまたホグズミードに戻ってきたの?危ないんじゃないの?」
「私の事は心配いらない。愛すべき野良犬のふりをしている。それより君の事だ、ハリー。私もいろいろと調べてみたが、どうも世間でも不穏な動きがあるみたいだ」

 そう言うと、シリウスはチキンを頬張りながら洞窟の隅にある『日刊預言者新聞』の束を顎で指した。暗い洞窟の中、杖明かりを灯してロンが記事を漁った。
 見出しにはこう書かれている。『バーテミウス・クラウチ謎の休職』『魔法省の魔女、未だ行方不明』『ダンブルドア遂に引退か』等々。確かにあまり良いニュースではない様だ。
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