第23章 【愛すべき野良犬】
やはりスネイプとカルカロフは『元・死喰い人』だったのだ。そしてカルカロフは腕の痣がハッキリして来ているので焦っているのだ。元・主人である『例のあの人』が力を取り戻しつつあるから。
クリスは恐怖した。『例のあの人』が予言通り力を取り戻しつつあることもそうだが、なにより今までの生活が一変してしまいそうで。自分はどちらに着けば良いのか、クリスはまだ考えあぐねていた。
気持ち的には純血主義者と一緒になって『例のあの人』に付き従うのはごめんだ。だが、仮に『例のあの人』が復活したら、父やドラコ達はどうなるんだろう。
やはり14年前と同じく純血主義者として『例のあの人』の元に戻るのだろうか。そうしたら、敵対してしまう。それだけは何としても避けたかった。
翌朝、クリスは殆ど一睡もできずに起きた。今日はシリウスに会いに行く日だ。のろのろと支度を済ませ、大広間に降りて行くと、もうハリーとロンとハーマイオニーが朝食を取っていた。
「お早うクリス」
「ああ……お早う」
「どうしたの、顔色悪いよ?」
「あぁ、ちょっと……昨夜あんまり眠れなくて」
ハリーの顔を間近で見ると、思わず目をそむけたくなってしまう。1年生の終わりに、ダンブルドアが言っていた。父は、母や自分を守るために『死喰い人』になったのだと。だったら……今抱えている問題も杞憂に終わってくれるだろうか。確証はないが、クリスはその一心にすがり付いた。
それから、4人であやしまれない様に食料を出来るだけ多くナプキンに包んでカバンに入れると、ホグズミード行きの“馬なし馬車”には乗らず、歩いてホグズミードまで行った。
珍しく天気の良い日で、ホグズミードに着く頃にはローブを羽織っているのが暑いくらいだった。
うっすらと額に汗をかきながら、指定されたダービッシュ・アンド・バングズ店の前を通り、ぽつりぽつりと民家が立ち並ぶ郊外へと向かって行った。この辺りは山のふもとになっており、あまり人通りも無い少し寂しい場所だった。