第23章 【愛すべき野良犬】
今やハーマイオニーも真っ赤になって下を向いている。スネイプの一言ごとにスリザリン生が笑う。まるで拷問の様だった。長い時間をかけて記事を読み終えると、スネイプは雑誌を丸めて鼻で笑った。
「さてさて……これ以上もつれた愛憎劇が始まる前に、席替えをした方が良さそうだな。ミス・グレンジャー、ミス・パーキンソンの横へ。ミス・グレインはロングボトムの隣へ。ウィーズリーはそのまま。ポッターは――我輩の前の席に。さあ素早く移動したまえ」
4人はしぶしぶ席を移動した。移動した先で、ネビルが「大丈夫?」と声をかけてくれたが、クリスは首を横に振るだけだった。
それからクリスはネビルの鍋も見ながら、自分の調合に没頭した。何かに没頭していないと、怒りで何をするか分からなかったからだ。
クリスが最後の調合を行っていると、誰かが教室の扉をノックした。入って来たのは――カルカロフだ。
何故対戦校の校長が、一介の教師の元に尋ねて来るのか、皆ポカンとして見つめていた。
しかしカルカロフはそんな事お構いなしに、教室の中心まで行き、直接スネイプに耳元で何か囁いた。スネイプも囁き返したが、カルカロフは教室を出て行く素振りすら見せず、行ったり来たりして時間を潰していた。その間ずっとスネイプを監視しているようだった。
終業のベルが鳴ると、生徒達は素早く支度を済ませ教室から出て行った。クリスもこれ以上スネイプに付け込まれると厄介だと早々に教室を出た。
しかし教室から出て見ると、ハリーの姿が無いことに気づいた。またスネイプに苛められて居残りでもさせられているんじゃないかと、こっそり教室の扉を開けて中を覗うと、会話こそ聞こえなかったが、カルカロフが左腕をスネイプに見せているのが目に入った。
まさかと思い、クリスは恐る恐る自分の左手首を見た。すると――錯覚などではなく、最近黒くなってきていた左腕の痣が、ハッキリと髑髏の口から蛇が這い出ている形をしていた。
こんなにはっきり見たのは、1年生の時に初めて『例のあの人』と対峙した時以来だ。クリスはサッとローブの袖で左手首を隠すと、逃げるように談話室に向かって走って行った。