第23章 【愛すべき野良犬】
「なに?まさか君本当に『愛の妙薬』を?」
「馬鹿な事言わないで。そうじゃなくて、ビクトールが私に話した事、どうして知っているのか疑問に思っただけよ」
「なん!?――むぐ……」
叫びそうなったロンを、すかさずハリーとクリスで口を抑え付けた。ハーマイオニーは傍から見ても分かる位顔を真っ赤にして、乳鉢でタマオシコガネをすり潰している。
「湖から引き揚げてくれた時に、そう言ったの。君さえ良ければ、ブルガリアに来ないかって。それに……確かに言ってたわ。こんな気持ち、他の人に感じた事が無いって」
「君はなんて返事したんだよ」
「問題は、リータ・スキーターがどうやってこの話を聞いたかって事よ。もしかしたら本当に透明マントを持っているのかもしれないわ」
「だから!君はなんて答えたんだよ!!」
「この件は十分に調査する必要があるわ。プライベートも何もあったものじゃないわ」
「――プライベートな時間は、吾輩の授業の後にしてもらえるかね?」
ロンとハーマイオニーがあべこべな会話をしていると、いつの間に後ろに立っていたのか、スネイプが雑誌を片手に暗いべっとりとした髪の隙間から4人を見下ろしていた。
「私語は慎みたまえ、グリフィンドール10点減点。それに加え机の下でこんな雑誌を読んでいたとは……グリフィンドールもう10点減点。さて――」
スネイプは雑誌をパラパラとめくると、さっきまで開いていたリータ・スキーターの記事に目を止めた。不味い、スネイプがハリーをいじるネタを見付けて、それを使わないわけがない。
クリスは咄嗟にそれは自分のだと言いだそうとしたが、それよりも先にスネイプが記事を声に出して読み始めた。
「なになに――『ハリー・ポッターの憂鬱』おおう、これはこれは悲惨な事だなポッター、有名人には何かと面倒事が絡むらしい」
今度はハリーの顔が真っ赤になった。スネイプは舌なめずりをした蛇の様に、ねっとりと、また意地悪くスリザリン生が笑うのを分かっていながら一文一文丁寧に読み始めた。
「孤独の渦に溺れているところを同じ寮のハーマイオニー・グレンジャーによって救われた。――ほほう、2人はそんな仲になっていたのか。いやはや、我輩の目の届かぬうちに……か」