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ハリー・ポッターと闇の姫君

第3章 【期待と不安を胸に】


「え?もうそんな時間!?」と、ハリーが腕時計を見て確認すると、出発まであと5分しかなかった。皆で苦労してトランクを運び入れると、ハリー達は燃えるような赤毛の男性2人と、恰幅の良いおばさんとお別れを言いにホームに戻った。クリスはそれを窓越しに見ていた。

 恰幅の良いおばさんはロンのお母さんだ。去年の夏休み、少しだがお世話になった事がある。
 その隣に立つ2人の男性の内、1人は知っていた。1年生の時に会った事がある、そばかすと灼けた肌が特徴的なロンの2番目のお兄さんだ。もう1人の長髪の男性は知らなかったが、同じ燃える様な赤い髪からしてロンの1番上のお兄さんだろう。よく見て見ると、かなりの美形だ。容姿に自信のあるクリスが認めるほどカッコいい。
 クリスが見惚れていると、汽笛が鳴って皆コンパートメントに乗り込んできた。窓を開け、ハリーとハーマイオニーが最後の挨拶をいている。

「夏休みはお世話になりました」
「良いのよ、こっちも楽しかったから気にしないでちょうだい」
「おばさん、僕も本当に楽しかったです」
「良かったらまた来年遊びに来てちょうだい。クリスマスは――きっとホグワーツで過ごしたいと思うから」

 クリスの父と同じ、何か含みのある言い方をして、おばさんは手を振った。いったい何があるのか聞きたかったが、列車が出発して結局聞けずじまいに終わってしまった。おばさんと2人のお兄さんは列車がカーブを曲がって見えなくなるまで、手を振っていた。

「それで?クリス、休暇はどうだった?」
「その前に、ロン、こいつをどうにかしてくれ。煩くてかなわない」

 クリスはロンがシリウスから貰った豆ふくろうを指さした。姿は小さくて丸い毛玉みたいで可愛いが、カゴの中で上下に羽ばたいてはホーホーやかましく鳴いていて煩い。ロンはトランクからレースのついた古いパーティローブを引っ張り出してカゴの上にかぶせた。

 まさかとは思うが、これがロンのパーティローブなのだろうか。だとしたら……こう言っては何だが、かなり可哀相だ。
 もし自分がこれを着ろと言われたら、間違いなくお断りだ。しかし――ロンの家の経済状況を知っている身からすれば、何も言えなかった。代わりに、クリスは自分から話題を振って誤魔化した。
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